四天宝寺

□After
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「ああっあかん…!緊張する!」



『いいー??いっくよーっ!』



「うっわ!!白石!まじでやばいで!」



「わー…名無しさん先輩…。」



「お前ら!!!俺より先に名無ちゃん見るなんや許さへん!!
絶対その目をどうにかしてやる!!!」



「白石部長、今日はめでたい日やのに物騒すわー」



「はよ!!!みたい!!!名無ちゃんええ!?」



『まーだ!』




その声が聞こえると、俺のまぶたの上にシルク素材のツルツルした感触に包まれた。





「あああアカン緊張してきた。
っすーはー…よし、名無ちゃんOKや」



『いくよ〜……っはい!!』






高鳴る心臓を落ち着かせるために一息すると、
暗かった俺の視界がパッと明るくなり、まぶしさに思わず目を再び閉じそうになる。






「……っ名無ちゃん…。」






ゆっくりと目を開けると、そこには
真っ白なウェディングドレスを着た笑顔の名無ちゃんがおった。


アカン…泣きそうや。
ほんまに俺ら結婚したんやな…。





「っぐ……」



『く、蔵!?』



「白石、泣いてもうた」



「部長の泣いてるところ見るんカブリエル以来っすわ」



「んおお!!懐かしい事言うなあ!ナイスや財前」



『そういえば昔飼ってたねえ…』



「お前ら!!!!!それを今掘り返すな!!
財前!!ちゃんと写真とビデオ撮れたんやろうな!?!?」



『蔵、落ち着いて…。』




「はいはい。バッチシ撮れてますって」




「それ最後のお見送り映像に使うんやからな!!」




「そうなん?財前、めっちゃ大役やん。」




「まあいざって時のためにプロの人もおりますから、大丈夫やろ。」




『光くん、ありがとうね』




「名無しさん先輩のためやから、まあしゃーないっすわ」




「そこぉお!!口説くなあ!!!」




「なんや…結婚してから白石は過保護になったな…。」




「昔からっすわ」




「まあそうなんやけど…」




『そこが蔵の良いところでもあるよね』




「名無ちゃんはようわかってくれとる、それだけで俺は幸せや…。他の奴らなんやどーーーーでもええ。」




「あーーほんまうざい。」




『ふふっ』








名無ちゃんの漏れてしまった笑い声をきっかけに4人で爆笑。
そんな風に俺と名無ちゃんはファーストミートを迎えた。


今日という日を迎えられてほんまに幸せや。
でも、これはゴールやない。スタートや。


長い時間を越えて復縁した俺らは、早速大阪にいるという名無ちゃんのご両親に挨拶に行った。例の問題もあったから、相当ためらっていた名無ちゃんやったけど、いざ帰ってみたら家族一同名無ちゃんの帰りをずっと待っていたらしく泣いて歓迎しておった。
それもあって、結婚を前提にお付き合いをしていますっと挨拶したところ、結婚は俺が就職してからやって話にも持って行けて、順風満帆といったところやった。


そういや謙也はというと、あの教室で俺との名無ちゃんのラブラブな時間を邪魔したらアカンって珍しく、珍しく(大事やから二回言うた)空気を読んで、いつの間にやら教室を後にしていたらしい。

まあ、いうても、どうせ入口らへんで聞いて泣いてたんやろうけどな。
ひと段落着いた頃に謙也に電話して呼び寄せてみれば、近くで着信音聞こえたし、目の下赤なっててん。
バレバレやっちゅう話や。

そんな謙也の俺らへの第一声は「二人はもう二度と離れたらあかん。」やった。
正直、その言葉を聞いて鼻がツンとして目も潤んでいた。
ずっと俺らのそばにおって、全部知ってるからこそ、その言葉は重くて想いの溢れたもんやって十分過ぎる程伝わったからや。

隣にいる名無ちゃんを見てみれば、耐え切れなくて、また涙を流していた。

謙也。ありがとう。
お前には一生感謝してもしきれへん。






「ええ…」



―キーーーン。




「友人代表と表しましてご挨拶をさせて頂きます。ご紹介に預かりました白石くんと小百合さんの中学からの友人で、忍足謙也と申します。えー…硬いのも苦しなるんで、いつも通りの呼び方と喋り方にさせて頂きます。この度は、白石、名無ちゃん…ほんまにほんまに結婚おめでとう。」





まだ垣間見える謙也のヘタレ具合に、名無ちゃんと顔を見合わせて笑った。



名無ちゃんの隣におられる事の幸せを噛み締めて、再び来てくれた謙也、財前をはじめ友人や上司を見る。


後ろの席には俺の家族と名無ちゃんの家族。
既に涙が止まらんようで、一部始終知ってる友香里も姉貴も泣いとった。




「―たんです。ほんまにこの二人は俺にとって最高の友人で、ほんまに大切な人です。そんな二人が今日という日を迎えられて、そんで俺が今ここにおれる事が幸せです。白石、名無ちゃん……っぐ……ほんまにありがとう!おめでとうっ!!」



会場が拍手で包まれる。ところどころグズグズと、鼻をすする音が聞こえて、ああ誰かも同じ気持ちで感動してるんやなって思った。

堪えきれず泣いてしまった謙也を見て俺もまた涙が溢れる。
アー今日は水分いっぱい摂らなあかんわ。
すぐ溢れてしまう。


ふと隣の名無ちゃんに視線を戻すと、名無ちゃんも溢れる涙をハンカチで必死に拭っとった。

その姿を見て、くくっと喉をならせて笑ってしまう。



『どうしたの?』



「いや、幸せやなあって」



『本当だね。ふふっ』










俺は今日も昨日もあの日も絶対忘れへん。
周りの人に支えられてここまで来れたんや。
絶対に名無ちゃんを悲しませたらあかん。


これからも宜しくな。














「ああっあかん…!緊張する!」



『いいー??いっくよーっ!』



「うっわ!!白石!まじでやばいで!」



「わー…名無しさん先輩…。」



「お前ら!!!俺より先に名無ちゃん見るなんや許さへん!!
絶対その目をどうにかしてやる!!!」



「白石部長、今日はめでたい日やのに物騒すわー」



「はよ!!!みたい!!!名無ちゃんええ!?」



『まーだ!』



「あああアカン緊張してきた。
っすーはー…よし、名無ちゃんOKや」



『いくよ〜……っはい!!』



「っぐ……」



『く、蔵!?』



「白石、泣いてもうた」




「「「『ッハッハハハハ』」」」








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今日は来てくれてありがとう。





白石蔵ノ介
白石名無しさん


20○○年○○月○○日



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<END>⇒あとがき・裏設定
2017/01/02
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