四天宝寺
□なんもしたくない
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『あ〜なんもしたくない。』
ふと俺の隣でゴロゴロする名無しさん。
彼氏である俺が泊まりに来てるいうのに酷ない?
「既に何もしてないやろ」
『違うのそういう事じゃないの!』
「どういう事やねん」
彼女は女の子特有の月1の辛い日らしく、さっきからずっと布団の上でうつ伏せになっておった。
ほんまに辛そうやし、しゃーないわ…。
名無しさんの家には何回も泊まりに来てるからか、物がどこにあるのかはある程度わかる。
断りを入れるわけでもなく、勝手に引き出しをあさって、カイロとタオルを用意する。
『光?何し、』
「なんもしたくないんやろ」
『え、あ、ありがとう…。』
名無しさんの背中にカイロを貼って、そこにタオルを被せる。
男ながら、名無しさんがそうやってるん知ってたなんて気持ちわるがられるやろうか…。
そう思って今の彼女のためにとった行動に自信をなくした。
『光、いつも見てくれてたんだね』
「…。」
『ありがとう。大好き。』
そうやって、名無しさんは俺の気持ちを読んだみたいに言葉をくれる。
たまに感じる年上感に少し寂しくなりながらも、俺はどんどんこの人に惹かれてるんやから、ほんまにアホやわ。
『なんか、体調よくなってきた!』
「は?」
『アイスとおしるこ買いにいこう!!!』
「は!?」
『さ、光、上着着て準備して!!』
「え、いや、外寒いで。」
『いいからいいから!』
そう言って起き上がっては、無理やり手を引かれて外へ飛び出した。
『さっむ!!よし、走ろう!!!』
「寒さで頭までおかしくなったんちゃう」
『うるさい。はい、レッツゴー!』
俺を引っぱるその手は確かに冷たくて。
きっと俺につまんない想いさせてるんやないかって、思っての行動なんやろ。
自分の体調を後回しにしてしまうくらい天真爛漫過ぎるこの人は、どこにスイッチがついてるかもわからへん。
けど、いつも俺の事を一番に考えるこの行動力には驚かされる。
「なにもしたくないんやないん」
名無しさんが自分のことを考えてくれていることに思わず顔が緩む。
俺は一生この人の手を離さへん。
そう誓ったとある休日の昼やった。
2016/11/24