四天宝寺

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毎年恒例のテニス部員みんなで集まって年を越し、新年が明けた。


新年早々騒がしいっちゅーわけやけど、今年は名無がいる。

クリスマスの日から、なんとなく話すことが多くなった気がした。

その反面俺の考えすぎなんかようわからんけど、
なんとなく謙也と話す機会がめっきり減ったような気がした。



もしもそれが気のせいではないとしたら
確実に名無のことやと思った。




「なあ、謙也…」


「財ぜ〜ん、ほんまにあれどうなったんや〜」




いや、気のせいやないよな……。




今まで、謙也とこんな風にすれ違ったことがなかったために、戸惑いしかなかった。

完全に俺を避けとる。


テニスのことでぶつかる事があっても、それはお互い本気やとわかっていての上やったから、部活以外ではお互いにケロッとしていた。

でも今はその時とは完全に違う。



部活も終わり、あとは着替えるだけやった。
話すなら今しかないと思った。

財前と肩を組んで(財前は嫌がっとるんやけど)、更衣室に向かう謙也の腕を掴んだ。


「なあ、謙也。」


「っ…なんや」


「話があるんやけど」



謙也の目をみると、何を思っとんのかもうわかった。

目は口ほどに物を言うって、ほんまなんやな…。



財前が謙也の背中を押すと、謙也は渋々俺の方に向き直り、それを確かめて更衣室から聞こえないであろうテニスコートの端まで向かった。


名無が聞いておったらまずいから、さり気なく近くにいないことを確認した。




「話ってなんや」


「言わんでもわかっとるんやろ」


「……。」




なにをどう説明してええのか、正直わからんかった。
宣戦布告してたわけやないし、なにしろ謙也が名無を好いていたのはわかっていたが、直接言われたわけやなかった。


だけど、謙也とこのまま気まずいのはどうしても嫌やってん。



「…俺、クリスマスの日、名無と会っててん。」


「え?……」


先に口を開いたのは謙也やった。
思いがけない言葉が聞こえた。
瞬時に理解ができんかった。




行きは現地で待ち合わせしたものの、帰りは遅かったのもあって一緒に帰ったんやけど、
その時に見られた……という意味なんやろうか?

それとも…



「午前中、名無と電車で会ってん。
俺、さみしい男やから財前とテニスする予定やったんやけど…ばったりな。
今日は結局どこいくん?って聞いたら白石とスケートっちゅうからほんまに泣きそうやったわ〜」


へへって笑う謙也やったけど、全然うまく笑えてないわ。



「…ほんまにすまん。
俺が勝手に白石のこと避けてただけやから。」





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