四天宝寺

□1
1ページ/5ページ



それは突然やってきた。




「はい、それじゃみんな席につき〜」



立ち歩いていた何人かが自分の席へと戻っていった。



「今日は紹介せな人がおります。」



なんや朝からざわついとると思ったら、どうやら転校生がくるんか。この流れは。

俺は教室から見えるテニスコートを片目に、渋々黒板の方へと向き直した。


―ガラガラ。



「…。」



その音ともにやってきたのは、一人の女の子やった。
思わず息を飲んだ。



『はじめまして。名無しさん名無しさんです。
今日から卒業までの半年間、宜しくお願いします。』




今まで通り過ごして、今まで通りのメンバーで卒業するはずやった。
卒業まであと半年。俺という本の中に、一人の登場人物が現れた。



「ほな、名無しさんさんは白石くんのとなりな。」



不意に俺の名前がきこえてきて、名無しさんさんに手をあげる。軽く会釈され、俺も会釈で返す。
誰もいなかった俺の右隣の席に彼女がやってきた。



『ありがとう。』



そう一言だけ言うと、彼女は荷物を横にかけてふわりと座った。シャンプーのかおりがして、なんだかくすぐったかった。

なんやねん。



「休み明けでまだ気が入らんかもしれんけど、今日から引き締めていけよ〜」



夏休み明けでやる気のない教室に喝を入れようとも、先生がやる気ないんじゃ意味ないやん。

そう思いつつも、なかなか話が入ってこなかった。隣の名無しさんさんが気になって仕方がなかった。


一目惚れやった。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ