血界夢 〜Mdchen von Blut〜
□とある王様の悪戯
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平凡な日常。
まさにその言葉が相応しい日々をこの2人は送っていた。
先程までは。
『なぁ、和希。うちらさっきまでどこで何してたっけ?』
『お前の部屋に入って現在に至るな。』
そう、先程まで2人はさくらの部屋にいたはずだった。だが目の前に広がるのはさくらが見慣れている筈の部屋ではなく、まるで何処かのアパートの一室。入ってきたはずのドアは本来木製であるはずのドアではなく冷たい鉄製のドアだった。
パッ
突如どこからかスポットライトが2人を照らし、そしてもう一つスポットライトがついた。下には金髪の男性。白衣のような服を着た男は嫌にハイテンションで2人を指した。
「よ〜うこそ招き入れた少女達!」
2人は顔を合わせ、声を合わせる。
『『すいません、部屋を間違えました。』』
2人は踵を返しドアに足を向けた。
「待ちたまえ、話を聞け。」
男が指を鳴らすと2人は二つの椅子に座らされた。
「全く、何とも普通な反応して。実につまらん。」
『いやこの状況で他に何と言えと。』
『そしてあんたは誰だ?』
「ようやくか、僕は堕落王フェムト。この部屋、いや世界に君達を招き入れた張本人さ。」
2人は自分を堕落王と名乗る男にお互い耳打ちをした。小さな声で「だらけきった中二病だ。」「残念なニートだ。」と散々な事を言われてる。
「待ちたまえ!誰がだらけきった残念ニートだ!!」
『『あ、聴こえてた。』』
「ふん、君達の今の状況を教えてやろうとしてるんだ。しっかり聴きたまえ、血術の使い手よ。」
ピクッ
『どこまで。』
『俺等のことを知っている?』
2人の問いに堕落王フェムトは笑う。
「描式血操術次期当主、吉川和希。言血術次期当主、鈴宮さくら。
君達は今!別世界である元NY、異界と現世が交わる街、ヘルサレムズロットにいるのだ!」
『ヘルサレムズ?』
『ロット?』
堕落王フェムトは説明した。
この世界の3年前、NYが大崩落し、異界と人間が共存している世界だということ。
実際に窓を開け、外の風景を見せた。人間や見たことない生き物が道を蹂躙していた。
「どうだね⁉現実だということが分かっただろう?」
『『ふーん。』』
「…え?驚かないのかい?さっきまでちょっと緊迫感ある空気になりかけたのに。」
『いや十分に驚いてる。』
『それで?うちらを連れてきた理由は?』
「あぁ、特にない。」
『『ふぁっ⁉』』
「そこに驚くのか⁉いや退屈だったから別の世界線とかあるかなー?って探してたら偶然君達を見つけて僕の暇つぶしに連れてきただけだよ?」
『やっぱだらけきったニートじゃねえか。』
「違うわ!まあせっかく連れてきたし、しばらくここで暮らしたまえ。この部屋を君達にやろう。生活費としてこの金庫に金を入れてあるから好きに使いたまえ。君達の世界線は時間を止めているから安心するがいい。それでは精々死なないように頑張りたまえ!」
発言をする間もなく、スポットライトと共にフェムトは消えた。2人も椅子から立てるようになっている。
『うん、たのしそうなことになったな。』
『じゃないよね⁉え、これ慌ててんの可笑しいの⁉うちが変なの⁉何なのあのだらけ王‼』
「堕落王だ‼」とどこからか聞こえた気がしたが気のせいだろう。
『俺等の世界線時間止まってるみたいだし、とりあえず楽しもうぜ。な?』
小首を傾げ、和希は微笑む。
『…まぁ和希が可愛いからいっか。』
さくらは和希に弱かった。
こうして2人の日常は非日常へと変わっていった。