short 2


□弱点
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稽古つけて差し上げます……なんていきなり言われて、稽古場に嫌々向かった。


男所帯の彼の元では、女の私は足手まといになるのか、本部で待機させられることも多く不満が募っていた事もある。ここである程度戦える所を見せておこうと気を取り直す。


稽古場……施設としては整っているが、使うのは弐號立会人の部下達、むさ苦しい男ばかり。きっと彼等の為の設備だ。私も稽古には何度か参加した事はあるものの、理由をつけては断ってきた。


だけど、今日は立会人直々のお誘いだ。断る訳にはいかない。深い溜息を吐き出して、ジャージの袖を捲りながらドアを開いた。


「………門倉立会人、お一人ですか?」

「ええ、お疲れさまです。名字さん、今日は他の者はいません。」


え……何人かでの稽古かと思っていたけど、そこにいたのは門倉立会人ただ一人。二人きりなんて……何となく気まずい空気が流れる。


「門倉立会人は私の事、足手まといだと思ってますか?」

「……いいえ、そんな事はありませんよ。」

「でも……危険な現場には連れていってくれないですよね。」


睨み合いに近い表情でお互い直立して向かい合い、気まずさをかき消すように日頃の不満を口にする私を前に、眉間に皺を寄せた門倉立会人が、分かりやすく溜息を溢した……同時に背中に衝撃が走る。


「……ケホッ!何す……っ!」


立会人の後ろの天井を見上げている。一瞬のうちに押し倒されてしまっていた。口元を大きな掌に覆われ声が出せず、彼の掌越しに口付けされるように顔が近付いた。


「全力で振りほどいてみ。」


熱い息が顔にかかる。


自由な両手で逞しい胸板を押そうともがくが、いとも簡単に頭上で纏められてしまう。悔しさと同時に羞恥心がこみ上げてきて、涙目になってしまった。


「……もっと本気出さんと、犯してまうよ。その顔じゃ煽っとるようなもんやし。」


聞き慣れないイントネーションと、声色で発せられた言葉に顔が熱くなったのがわかった。


クッと笑う立会人に、恥ずかしくなった私は唯一自由な足を曲げて抵抗したけれど、それすら簡単に押さえられてしまってますます身動きが取れない。


「……わかる?これが弱点。」

「女の力じゃ勝てないって事ですか?」


口元を押さえていた手を放して困った顔をした立会人は、耳元で囁いた。


「……名前が弱いとは思っとらんけど、押し倒されたら男には敵わんやろ。心配で気が気やないから、ワシの弱点なってまう。」


私に覆い被さる立会人の身体も、吐息も、腕を押さえる手も、全部……全部熱い。私の体温まで上げてしまうような熱い視線から逃げるように目を逸らして、ぎゅっと瞼を閉じる。


「今なら振りほどけると思うけど。逃げへんの?」


門倉立会人の言葉にハッとしたように身体を起こそうとしたが、目の前の彼の意地悪そうな顔が逃がさないと物語っている。


「……遅いね。」

「ぅんっ!」


今度は指を絡めるように手を押さえられ、掌越しではなく熱い口付けが降りてきた。




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