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隣で眠る名前の顔をじっと見ながら、柔らかな頬へ手を添える。うっすらと浮かぶ涙の跡に親指を這わせて、深く溜息を吐いた。


柄にもなく舞い上がった。門倉さんのものだと言った名前が、身体を預けたその仕草に、恥ずかしそうに目を閉じたその表情に。


立ち会いのときにも感じたことのない昂りと、どうしようもなく沸き上がる劣情を抑えきれなかった。


別に、彼女でなくとも、性的に興奮する相手なんていくらでもいたはずだった。それこそ、名前は容姿が飛び抜けて良いわけではない。なのに、全身の血液が、まるで沸騰でもしたかのような熱に浮かされて、「待って」の声も、弱々しく押し返してくる細い腕さえも、押さえつけるようにして、何度も何度も彼女を求めた。


収まることのないぞくぞくした脳内の痺れを煽るように、甘く響く声と、どちらのものかわからない体温に、くらりと感じた眩暈を振り払ったとき、腕の中でぐったりする名前を見て我に返った。


息も絶え絶えといった様子で、だけどそんなにしてしまった自分を怖がることもせずに、すがるように抱きついてきた身体をそっと抱き締める。ゆっくりと背中を叩いて、彼女の呼吸が整うのを待った。


「……悪い、やりすぎた。」

「ん……好きです、門倉さん。」


だからどうして……煽るような事を言うのか、無自覚なやつは質が悪いと毒づいて、寄せられた唇に自分のものを当てる。暫くすると、穏やかな寝息が聞こえてきて、汗ばんだ身体をそっと離してタオルを取りに向かった。


シャワーを浴びてもよかったが、名前が起きたら一緒に入ろうと思い直して、彼女の身体を拭いてやる。少しだけ寄せられた眉をつねるようにしてみると、うぅんと嫌そうな声を出した。そんな当たり前の反応も可愛くて、早く起きろと小さな声で呟く。


いや、でももう少しこの寝顔を見ていたい気もした。








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