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"待って"



その言葉は彼の熱い舌に絡め取られた。履いたままの靴も、ひんやりとしたシーツの感触も、どちらのものかわからなくなった吐息も、全てが私の心臓を跳ねさせる。


「……門倉さん、門倉さんっ!」

「はっ……もう待てん。」


何時もと違う彼の声に、余裕の無さそうな表情にときめいた。改めてこの人が好きなんだと実感し、何度も何度も落とされる熱い口付けに必死に応えていると、大きな掌がお腹を撫でるようにして胸元へ向かってくる。


跳ねるようにびくつかせてしまった身体をあやすように、やわやわと揉まれて羞恥心が込み上げる。クツクツと笑うその低い声がざらざらと耳の奥に響いて、その耳障りにぞくりと身体の芯が甘く疼いた。


「……緊張しすぎ。」

「ごめんなさい、あんまり慣れて……んっ!」

「慣れてないとか、昔の男連想させること言うな。」


意外と嫉妬深い彼にクスリと笑みを漏らしてしまうと、鋭い視線に射抜かれた。


「随分と余裕そうやね。」

「違っ!………んんっ!」


私の吐く息まで飲み込むつもりなのかというくらい濃厚に絡んでくる舌に、ぼうっと霞む意識をなんとか手繰り寄せようと彼の髪を掴む……いつの間にか服の下に滑り込んだ長い指に胸を刺激されて、くぐもった声を挙げてしまった。


可愛ええと呟く門倉さんに抱き起こされ、そっと身に付けていたワンピースや靴を脱がされて、露になった肌にひんやりとした部屋の空気を感じる。


じっと見つめてくる彼の瞳に映り込んだ自分を見つけて、目を逸らしたき、肩をそっと押されて背中がベッドに沈む。


見なくてもわかるくらいに見つめられ、再び羞恥心に襲われ目を閉じると同時に、胸にざらりと這った彼の舌に、今度こそ抑えきれない声が部屋に響いた。


「ぁん……」


丁寧に上半身に愛撫を施されて、恥ずかしさと快感で息も絶え絶えになった頃、腰を撫でられ思わず彼の手を握った。


「……嫌か?」

「恥ずかしい……です。」

「大丈夫じゃ……ほんま可愛ええ。」


制止の手も、彼の掌に包み込むように握られ、遂にされるがままになってしまう。


私の身体の隅々まで確かめるように、味わうように、愛でるように、口付けた門倉さんはほんの少し乱れた髪を掻き上げながら「ええか?」そう小さく呟くと、私を1度強く抱き締めてから、逞しい身体を押し付けてきた。


「……〜っ!」

「痛いか?……力抜けるか?」

「ぅん……痛くはないです。」

「そうか。」


右目を細めた彼からの優しいキスに、圧迫感で強張らせた身体の力が抜けいていく。


「名前……悪いの、加減できる自信ないわ。」

「やぁんっ…………」


そう言った時には、強く揺さぶられるように突き上げられて、私の声ばかりが部屋に響いた。




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