short


□It's a go past of your love!
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久しぶりの賭朗勝負に立ち会う事になり、最近の退屈な賭けの場よりは楽しませてくれるだろうと、普段より幾分か気合いを入れて向かった現場。


相手方の立会人の姿が目に入ったとき、思わずはっと驚く仕草を見せてしまった。自分の後ろに控える黒服達は私が驚いた事に気が付きもせずに立ち会いの準備をに取り掛かっていた。


その様子をチラリと見たあと、再び視線をこの場にいる私以外の立会人……名字 名前へと向ける。


黒服へテキパキと指示を出す彼女は数週間前に見たときよりも綺麗になっている気がした。頭の中で何度も汚した彼女は、いざ目の前にすると私の脳内にいる彼女よりも綺麗で、罰が悪くなり思わず小さく舌打ちを溢した。


私の視線をとらえて離さない彼女に釘付けになってしまい、端から見ればぼうっと立ち尽くす私を怪訝そうに見る会員に、笑顔で勝負の説明をする彼女を尚もじっと見つめる。


簡潔に説明を終えたあと黒服を交えて会員と楽しげに話す彼女が一瞬此方を見た。


そんな姿を見て、他の男に向けられる笑顔に嫉妬し焦る自分を見咎められた気がして目を反らす。


視界の片隅で私に向かって微笑む彼女に、少しだけ気を良くしたところで、始まった勝負を見守った。


期待外れのつまらない勝負を億劫さも見せずに丁寧に取り仕切った彼女の終了の声で我に返り、負けた私側の会員が逆恨みで彼女に銃口を向けた瞬間、その手を捻り上げ壁へと蹴り飛ばす。


「……大丈夫でしたか?名字立会人。」

「はい。ありがとうございます。弥鱈立会人、今日はずっと上の空でしたね?何か心配事でも?」

「いいえ、ご迷惑お掛けしてすみませんでした。」

「お気になさらず。」


笑顔の中にも軽蔑の交じったような冷たい視線を感じて高鳴った鼓動をひた隠すように視線をそらし続ける。


「……弥鱈立会人って、私のこと嫌いですか?」

「……何故そんなことを聞くのですか?」


いいえ、その反対です。とは言えずに咄嗟に繕った表情も、きっと他人から見れば嫌そうに映っていただろう。


「そうですね、ごめんなさい。今のは忘れて下さい。」


それっきり口を開かなくなった彼女は黒服に撤収の声を掛け、現場を去っていった。


さっきの質問は私に嫌われていたら嫌だと言うことだったのか、好きですと言えばよかったという後悔を舌先に乗せて、風船と共に空中に放った。



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