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□本気にしますよ。
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時々行われる賭朗の親睦会……1人1人、個性が光る立会人達が全員集まるとなるとそれはもう濃い。穏健派の私としては出来れば参加したくなかったのだけれど。


「お屋形様の命令じゃ、参加せざるを得ないじゃん。」


ぼそりと呟いたひとりごとは誰にも拾われることなく、場を取り仕切る判事の声が聞こえて来たのでそちらへ耳を傾ける。各自好きな席に座っていいらしい……これはラッキーだと紳士的な夜行立会人の隣を目指して立会人達の間を通り抜けようとした私の背中に、と
てもガラの悪いお声が突き刺さった。


「こら、どこ行く名字〜。」


ぎこちなく振り返ると、そこにはやはり……警視庁時代の直属の上司である南方さんと、眼帯のお兄さん基門倉立会人が肩を組んでニヤニヤ私を見下ろしていた。


「……南方さん、この集まりは親睦会ですよ。昔馴染みの私と南方さんが近くの席に座っても……」

「門倉がおるやろ。こいつが名字とお近づきになりたいって〜。」


私の言葉に被せるように言った南方さんが門倉立会人と私が隣になるよう席へと促す。


半ば強引に門倉立会人の隣に座らされた私はチラリと彼を覗き見たが、生憎、眼帯側なので表情はよくわからなかった。


きっと南方さんは以前私が門倉立会人のことを格好いいと言ったのを覚えていてからかうつもりだ。そんな警戒心を抱きながらも隣に座れた事を素直に喜び、紳士的な夜行立会人の元へ行くのを諦めた。


目の前に並ぶ料理を眺め、あちらこちらから聞こえる笑い声をBGMに南方さんからのセクハラを軽くかわしていると今まで静かだった門倉立会人が口を開いたので驚く。


「……名字は男おらんの?門倉なんかいいと思うんだけどなぁ。」

「門倉立会人ですか。私なんてとても……」

「どなたかお相手がおられるのですか?」

「……門倉立会人、それ本当に興味あります?」

「先程南方が申したでしょう。名字立会人とお近づきになりたい、と。」

「冗談じゃなかったんですか!?」

「さあ?」


クスクス笑った門倉立会人は私の持つグラスを指指して「空ですよ?何か頼みますか?」とメニューを手渡してきた。


心無しかさっきよりもほんの少しだけ近付いた距離に身体に緊張が走る。一旦意識してしまうと、彼から香る煙草の微かな匂いや香水の匂いまではっきりと感じてしまって、大して飲んでもいないのに顔が熱くなるのが自分でもわかった。


「あんまり飲むと、酔っちゃうんで……私、そんなにお酒強くないですし。」

「そうですか。なら無理強いするのも良くないですね。」


じっと見つめながら言われて、更に顔が赤く染まるのを感じていると不意に寄せられた門倉立会人の顔に悲鳴をあげそうになり咄嗟に口許を手で覆う。


「酔ったら送ってったるよ。下心あるけど。」

「え?」

「クッ!どうする?烏龍茶にしとく?」

「……いえ、門倉立会人と同じので。」

「了解。」


メニューを持つ私の手に重ねられた門倉立会人の手が、想像よりも温かかったことに、ドキドキと高鳴る鼓動が止まらなかった。




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