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自分の身体に掛かる重みと耳元で聞こえる寝息で目が覚めて、今の状況に叫びそうになるのをぐっと堪えて門倉さんの顔と同じ高さになるよう身体を動かした。
うっすら閉じた口許、普段は私を射抜くように見つめる瞳にかかった長い睫毛、すっと通った鼻筋、改めて綺麗な顔をしているなぁと見つめながら昨日の事を思い出す。
一緒に寝ようと誘った……正直、抱かれてもいいと思っていたなんて恥ずかしくて言えないけれど、本当はしてもよかった。
だけど門倉さんは約束通り何もせずにただ抱き締めて私の話を聞いてくれた。
それは何でもないような、他愛ない事ばかりだったけど、私の事を知ろうとしてくれている気がして凄く嬉しかった。
そんな幸せを1人噛み締めながら門倉さんの寝顔を眺めているうちに、ふと湧いてきた悪戯心。
たまには許されるだろうと起こさないよう薄く閉じられた唇にそっと自分のものを重ねる。それに全く気が付かずに穏やかな顔を見せる姿にクスリと笑った。
数秒間彼の寝息と唇の柔らかさを感じて、離れようとした瞬間……門倉さんと目が合った。
たちまち恥ずかしさで赤く染まる顔を隠そうとしても、私なんかの動きは彼にはお見通しだったようで、後頭部に回された大きな掌に抑えられて強く押し付けられた唇。
「……っ!かどっ……。」
ちょっと待ってという言葉は門倉さんの熱い舌に絡め取られた。執拗なくらい何度も何度も擦り合わされる舌に、頭がぼうっとしてきた頃にやっと解放されて大きく息を吸い込む。
「はぁっ!……急に、こんな!」
「クッ!寝込み襲ったんはどっちじゃ。」
「襲ってません!ちょっと、その……。」
「ちょっと?」
意地悪な顔をして覗き込んでくる門倉さんは息1つ乱してなくて、あぁこの人には敵わないと諦めのため息と共に言葉を続ける。
「……キス、してただけです。」
「ほぉ!寝てるワシに?キス?」
「実は、起きてたんですか?」
「寝てたよ。」
「嘘でしょ!」
「ほんま。」
絶対起きてたとますます赤くなるしかない私は彼の胸に顔を埋めようと少し近づいた。
「……今日はえらい煽るの。」
「え?」
ぼそりと呟く門倉さんを見上げたと同時にまた熱い口づけが降ってきて、されるがままに身体の力を抜いた。
「嫌がらんの?」
「……やじゃない。」
「ワシのこと好きか?」
「たぶん。」
好きって早く言え。そう言ってからまたキスをして、仕事に行くと身支度を整えるのを見守る。
あっという間に門倉立会人になった彼を見送った後、1人になった部屋で「門倉さん、好きです。」と小さく呟いた。
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