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□気になるあの子。
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見慣れた同僚の背中を見つけて声を掛けようと近付いたとき、聞こえてきた会話に思わず身を隠した南方は、面白い現場に遭遇したと行く末を見守ることにした。


「門倉立会人は、恋人とかいるんですか?」

「おりません。」

「だったら、今度……食事とかどうですか?」

「……折角のお誘いなのですが、生憎不規則な仕事なのでご一緒できかねます。」

「そう、ですか……突然すみませんでした!」


明らかに告白の雰囲気漂うその空気を、なんの躊躇いもなく切り裂いた同僚にどうしてだと小さく呟いた。


見えてはいないが走り去った女の足音が聞こえて、暫く経ったときに掛けられた声に驚きながら門倉の元へ姿を見せる南方に向けられる鋭い視線に、両手を上げて参ったのポーズを見せた。


「南方、おどれ……覗き見とはええ度胸じゃの。」

「たまたまだよ!悪かったな。それより、告白されてたんじゃないのか?」

「……別に。」

「黒服か?どんな子だったんだ?勿体ないなぁ〜、メシくらい連れってやったらいいのに。」


ニヤニヤと相手の女の容姿について訪ねる南方に、門倉は溜息混じりに答える。


「この歳なって、好いてもおらん相手に下心の為に使う時間も体力もないわ。」

「体力はあるだろ。てか、その言い方……誰か意中の相手がいるってことか?」

「別に。」


先程とは違う笑みを見せた南方が、しまったという顔をした門倉に詰め寄る。


「いいじゃないか。俺に協力できることなら何でもするぞ?」

「……男に二言はないね?」

「おう!当たり前だ。」

「……外務卿おるじゃろ?」


やっと口を開いた門倉は、南方も何度か関わったことのある女をあげた。それを聞いた南方が目を見開いたのを見て舌打ちをする。


「何だ、門倉お前外務卿のこと好きだったのか?……確かにいい女だけど、かなり気が強そうだぞ?」

「……違う。その隣におるじゃろ?」

「ん?その隣?」


思い出すように眉間に手を当てた南方が、あっ!という表情を見せた後、満面の笑みで門倉の肩を叩く。叩かれた本人は嫌そうな顔をしてその手を払った。


「いたいた!秘書みたいなのが!ふぅん……門倉、お前やっぱり可愛い系が好きなんだな。」

「うっさいわ!……こんな賭朗の中で、ふにゃっとしたあの笑顔が癒しやと思わんか?」

「ぷっ!……おいおい、睨むなよ。確かに可愛いと思うけどな。」

「手出すなよ。ワシがずっと前から狙っとるんじゃ。」

「わかってるよ!それより名前とか知ってんのか?」

「……名字 名前。」

「名前ちゃんねぇ。いつも外務卿が側にいるから誘いにくいなぁ。」

「おどれ、名前から外務卿引き離せ。」

「無茶言うなよ!彼女、外務卿のお気に入りだろ?何かしようとしたら鉄槌がくるぞ!」

「男に二言は?」

「……わかったよ!やればいいんだろ。」

「流石、それでこそワシのライバル。」


ニッと笑う門倉を見て、同郷のよしみだ、協力するか。と考えた南方は何か名前と泉江を引き離す方法はないかと思い浮かべながら、スーツをはためかせて歩く門倉の後を追いかけた。



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