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□ワンスモア
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帰さない、無かったことになんてさせない、そんな台詞に流されてはっきりした意識の上で身体を重ねた。お酒の勢い、酔っていたから覚えていないなんて言い訳は通用しない。


前夜に私を抱いた彼には、私に快感を与えることなんて容易かっただろう。思い出しても顔から火が出るんじゃないかと言うくらい、感じてしまった。


……それだけにとどまらず、「門倉立会人のことが好きです。」だとか「付き合って下さい。」だとか、言えと言われる言葉をうわ言のように繰り返した事に後悔しても、もう遅い。


今日も私の事を待っていた彼に手を引かれて車に乗せられた。あれから毎日業務終わりには家まで送ってくれる。ちなみにあれから身体を重ねるようなことはしていない。


ただ、自宅まで送ってくれる。彼の都合でそれが出来ない時には律儀に連絡までくれる。


意外とマメなところに驚きながらも、いつもの道を運転する彼の横顔を見つめた。


「門倉立会人、私達って……。」

「雄大。」

「……付き合ってるんですか?」

「チッ……、名前が付き合って下さい言うたんじゃろ?」


舌打ちしなかった?私が付き合って下さいって言った?……確かに言った。けど、それは貴方が言わせたんでしょう?


そんな文句が舌の先を滑って、空気を震わせようと外に出る直前、何とか飲み込んだ。どうしてって今にも粛清されそうな勢いで睨まれていたから。


「……言いました。けど、それは、その、ベッドの中の話っていうか。」

「ヤってるときの告白は、告白に入らんってやつか?」

「まあ、勢いっていうか……気持ちよさに負けて、と言うのが本音です。」

「はぁ……けど、ワシら身体の相性はええやろ?」


舌打ちの次は溜息?身体の相性って……所謂身体だけの関係になれってこと?なんて、今度こそ文句を言ってやろうと運転席を睨み付けるが、そこな門倉立会人の姿はなく、あれ?と思う間もなく開けられたドア。


どうやら目的地についたらしいが、私の家ではなかった。不思議に思いながらも車から降りると気まずそうに目を反らした彼が呟く。


「たまには、デートでもと思って。……明日休みじゃろ?」

「あ、はい。」

「色気ないのぉ〜。」


なんだかお洒落なレストランらしき建物に入ろうと先に歩を進めた門倉立会人の背中に問いかけた。


「門倉立会人って、私のこと好きなんですか?」

「……しつこいの。雄大じゃ。」


質問に答えない彼に再び問いかける。


「付き合うって言ってたの、本気ですか?」

「あの日に言うたやろ。ワシは火遊びなんかせん、て。名前が酔って誘ってきたとき、告白したんよ。」

「覚えてない。」


お店のドアに手を掛けていた彼が私の方に向き直って近づいてくるのを、ただただ眺めていると、私の手を取りそっと口付け、見上げてくる。


「2回も言わされるとはの。……名前、好きやった、ずっと前から。」

「っ!急に、ずるいです。」

「こないだと同じ答えやね。」

「私、門倉立会人のこと、苦手で……。」

「知っとる。」

「だから……っ」

「嫌いか?ワシのこと。」

「嫌い、じゃない。」

「好き?」

「……多分。」

「クッ!上等。」


ああ、また流された。


でも、私を抱き締める門倉立会人の匂いも、体温も嫌いじゃない。







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