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怯える名前を横目にマンションの駐車場に車を停めて、逃げようとした彼女を捕まえ抱き上げると自室へ連れて行く。


「……やだっ!何するの。」


「貴女を買ったと言ったでしょう。何をしようと私の勝手です。」


玄関へ走ろうとした華奢な身体を担ぎ上げて寝室へ放り投げた。多少怖がらせて逃げないように躾てやろうと彼女が身体を起こす前にのし掛かる。


突きだされた両手をベッドへ縫い付けて喚こうと開かれた唇を塞いだ。


「んぅ……っ。」


逃げ惑う薄い舌を自らの舌で絡め取って、暫く彼女の口内を堪能する……押さえつけた両手から力が抜けたのを確認して、その手を自由にしてやると重ねた身体を離した。


このままだと本当に止められなくなりそうだと理性をかき集めて視線を反らす。


「……やっぱ、無理矢理犯すとか趣味ちゃうからやめた。」


涙を浮かべた瞳で自分を見上げる彼女をそっと起こしてやり、リビングへと連れていきソファーへ座らせた。


「ワシは仕事も不定期やし、ここにおらんことも多いから……好きに使ってええよ。」


そう言って家のスペアキーを渡すと震える手で受けとる彼女に口角が上がる。


「……帰してはくれないんですか。」


「おどれの事はワシが買うた言うたじゃろ。言っとくけど逃げても無駄やからの。」


此処に着くまでの間に調べさせた名字 名前の個人情報をパソコンを覗いて読み上げていく。


予想通りの一般人具合に、今置かれている状況はさぞかし辛いだろうと同情しながらも、そうさせているのは自分かと笑った。


不安げに揺れた瞳を覗き込んで、頭を一撫でして言い聞かせるように囁く。


「あのままやと、賭郎の取り立て対象やったんじゃ。助けてやってんから素直にここにおれ。」


助けてやったなんて恩着せがましく言うなら、彼女の言うとおり帰してやればいいのにそんなつもりは欠片も沸いてこず、どこまでもこの女を気に入っている自分に苦笑した。


「……ありがとうございます、お兄さん。」


「……門倉雄大。」


「門倉さん、私仕事とか……」


「行く必要ない、その辺も全部こっちで手配する。明日は部下来させるから、生活に必要なものとか買ってこい。」


遠慮がちに頷いたのを確認して、仕事があるからと自宅を後にした。


「……南方のとこ泊めてもらうか。」


今更ながら馬鹿なことをしたと小さく溜息を溢して、煙草に火を着けると南方に電話するためケータイを取り出した。




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