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□遺伝子レベルで
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「門倉立会人、すっごくいい匂いしますね!……香水か何かつけてるんですか?」


休憩所のベンチに座る門倉の後ろを通った名前が、彼の首もとに顔を近づけて訊ねるので、質問された門倉は慌てて身体を彼女から離した。


「……ちょっ!いきなりなんじゃ!びっくりするやろ。」


「や、いい匂いするなぁって思って……。」


名前に嗅がれたうなじ辺りを抑えて顔を赤くしながら目を反らす。


「別に、香水みたいなチャラチャラしたもんつけとらん。」


「ええ〜、じゃあ何の匂いだろう。」


ううん。と首を捻りながら門倉を見上げる名前を、ドギマギした様子で見つめて心のなかで呟いた。


なんなん、こいつ。誘っとるんか?いきなり男の首筋に顔近づけるて何なん!?ワシがこいつのこと好きやってバレとるん?


門倉がそんな事を思っているとは知らずに、「やっぱりいい匂いなんですけどねぇ。」と一歩近づこうとする彼女から一歩離れると、近くを通りかかった南方に助けを求めた。


「南方!ええとこに来たの。お前もここ座れや。」


「何だ、門倉。」


「名前が、ワシのことええ匂いやって言うんやけど……おどれも同じ煙草吸っとるやろ。同じ匂いするかなぁ思って。」


そう言いながら名前の方へ南方を押しやると、「どうでしょう?」ニコニコと笑って南方へ顔を近づける彼女。


「……匂いってそんなとこで確かめるのか!?」


突然ぐいっと懐に入り込んで来た名前に顔を赤くし慌てる南方を見て眉を寄せた門倉が「おどれ、何照れとる。」と凄んでみせ、姿勢を正す南方。


南方の動きが止まり、彼の首筋の匂いを思い切り嗅いだ名前が首を振った。


「……南方立会人は普通です。やっぱり門倉立会人がいい匂い!」


少しショックを受けた様子の南方と、嬉しさと恥ずかしさを滲ませた門倉、「いい匂い〜!」と門倉に身を寄せる掃除人の名前という何とも奇妙な組み合わせに近くを通る黒服達も、休憩所に入れず休憩所の中を窺っていた。


暫くその状態が続き、彼らを見守る黒服達の間から音もなく現れたお屋形様が、静かに3人へ近付き言った。


「いい匂いって感じる異性は、遺伝子的に求める相手……らしいよ、名前。」


「お屋形様!……ってことは、門倉立会人のこと、私……。」


「うん、いいんじゃない。」


お屋形様の言葉を聞いて門倉を見つめる名前。その視線に緊張する門倉と、存在感を消す南方。


「門倉立会人……私と子作り、してください。」


「………は?」


そこは付き合ってじゃないのか。南方の呟く声だけが部屋に響いた。



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