short


□You are mine !
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"名前!"と呼ぶと嬉しそうに返事して、自分の後を追いかけてくる部下を女として見始めたのはいつからだったかわからない。


上から面倒を見るように言われて、女の部下なんていらないと思っていた頃が懐かしい。


他と分け隔てなく厳しく接してもめげずに仕事に取り組む姿を見守るようになり、何時しか業務外でも彼女の姿を探しては目で追うようになっていた。


懇意の部下に、「雄大君、名字さんのことが好きなの?」なんて聞かれるくらいにわかりやすい態度を取っていたらしく、女々しい自分に苦笑した。


見ているだけなんて……そんな初な恋などしたことがあっただろうか、そんな事を考えて馬鹿馬鹿しいと自らの気持ちに蓋をしてきた、筈だった。



嘘喰いの立ち会いで大怪我を負い、入院生活を余儀なくされて、その間名前のことばかり考えていた……そんな日々を過ごして、やっと退院と弐號復帰が決まり本部へ顔を出したその日、部下達が復帰祝いをしてくれるというので顔を出した。


集まる部下達に心配を掛けたと詫びを入れ、喜んだり泣いたり忙しい奴らに囲まれていたとき……久しぶりに見つけたその姿に心臓を鷲掴みにされたような痛みに襲われる。


もう病院で繰り返した後悔はしたくない……そんな事を考えながら、次々に挨拶にくる部下達の相手をしていたが、当の名前とはなかなか話せなかった。


名前を見つめ続けて幾らか時間が経った頃、復帰パーティーと銘打った飲み会も幹事の声で終わりを告げて皆それぞれ帰ろうとしている最中、トンと後ろから肩を叩かれ振り返ると彼女がいた。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません……門倉立会人、退院おめでとうございます。弐號復帰も!また宜しくお願いしますね。」


また彼女の笑顔が自分に向けられた事が、復帰したことへの実感を沸かせていく。


「……会いたかった。」


「え……?」


怪我のせいで自制が効かないのだと言い訳して、皆から見えないよう名前を路地へ押し込んで壁と自身との間に閉じ込める。怯えた瞳が自分へ向くように細い顎を掬って此方を向かせて先程と同じ言葉を繰り返した。


「会いたかった。」


「……お見舞い、行ったんですよ。」


「知っとる。南方から聞いた。」


そんな事を言ってるんじゃないと心中で溜息を吐いて、潤む瞳を覗き込む。


顔を近付けても拒絶の色を浮かべない名前の唇を親指でなぞって、耳元で囁く。


「嫌がらんのか?……このままやとキスしてまうけど。」


「私も、会いたかったですよ。」


あと数ミリで薄く彩られたそこにたどり着くという瞬間、掛けられた言葉と吐息にピタリと固まる。


「ワシが言ってる意味と同じか?」


「……どういう意味です?」


「っ!態度で察しろ。」


「ちゃんと言ってくれなきゃわからないです。」


上目遣いに見上げてくる名前をそっと抱き締めてつむじに口付けた。


「……好きじゃ。もう、だいぶ前から。」


「私も、門倉立会人のことずっと前から好きでした。」


「……知っとる。」


「うそつき。」


きゅっとスーツを掴まれる感覚を感じながら彼女の熱い唇に自らのものを重ねて、照れ隠しに「もっと早く言え。」そう呟くと「お互い様です。」と笑う彼女を今度は強く抱き締めた。



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