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□欲望彼氏
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残業続きで疲れた身体を引き摺り自宅へたどり着く。鍵を開けて部屋に入ると感じる暖かな空気と漂う良い香りが彼が来ていることを知らせてくれて、意気揚々とリビングへ向かった。
「お帰り。最近忙しいみたいやから、メシ作っといたよ。すぐ食べられるか?」
「ありがとう、雄大!嬉しい!」
見た目よりも家庭的な彼は、時々こうして世話を焼いてくれる。本当は私がしてあげるべきなんだろうけど。久し振りに食べる家で作られた料理と甘やかせてくれる彼に微笑んで、温め直す為キッチンに立つ背中に抱きついた。
「危ないじゃろ、名前が食べとる間に風呂沸かしとくね。明日は仕事か?」
「久しぶりの雄大だもん、くっつきたい。明日は休み。泊まってってくれるの?」
「……ワシも休み取ってあるから泊まってくわ。」
温めた料理を手際よくお皿に盛り付けると食べとけって言ってお風呂に向かう彼を見つめながら食べる。うん、美味しい。
戻ってきた彼と、近況報告し合ったり明日は何をしようかなんて恋人らしい会話をして私が食べ終わると、片付けておくからデザートだと林檎まで剥いてくれた。
「…今日、何の日だっけ?」
「なんでじゃ?」
「優しすぎる。」
「いつもこんなんやろ。」
そうかなぁ、何か企んでない?とウサギの形に切られた林檎を頬張っていると、風呂行こかと抱き上げられた。
「待って、お風呂って一緒に?!」
やっぱり何か企んでたと慌てる私に、何とも言えない笑顔で当たり前やと言いながら、私の服を脱がせていく彼にあっという間に裸にされた。
「ちょっ!恥ずかしいんだけど。」
「クク、裸くらい今更やろ?一緒に入りたいんやけど…嫌なん?」
いつの間にか裸になった彼にお風呂場へ押し込まれて泡だらけの浴槽に入れられた。
「全部洗ったるからの。」
「…自分でできるっ!」
私を逃がさないように後ろからがっちり腕を回して、耳元でまずは身体からと楽しそうに笑う声に、抵抗しても疲れるだけだと彼にもたれ掛かった。
「お、素直になるの早かったの。」
胸をつるつると撫でる掌に擽ったさと、むず痒さを覚えて唇を噛み締める。そんな私に気付いているのかいないのか、きっと気付いているのだろうけど。何度も太腿や局部をわざとらしく行き来する骨ばった手に息を洩らす。
「…感じとる?」
「感じてないっ!」
「そうか、残念じゃ。」
耳に噛み付きながら言われて遂に溢してしまった甘い声。しまったと思ったときには中に彼の指を感じて、彼の腕にすがりつく。
「やっ…あぁっ」
「…気持ちいいんか?」
私の弱いところを擦るようにして指を動かしながら聞いてくる彼を睨んでやろうと後ろを向くと、待ってましたとばかりに口付けられる。そのまま向かい合わせに抱き締められて、逃げても逃げても絡められる舌に飲み込み切れずに顎を伝う唾液。
お風呂の熱気と、響く声や音に羞恥と快感が入り交じって視界が滲む。ぼんやりした視線の先で胸元から顎にかけてを舐めあげた彼が意地悪く笑った。
「クッ、締めすぎじゃ。名前…もうそろそろええ?」
「…待って、ここじゃやだ。」
「それは聞けん、もうワシも限界じゃけぇ。」
ひょいと抱えられて彼の上に座らされたと思ったときには入り口に硬いものを宛がわれていて、制止の言葉も聞き入れて貰えなかった。
「あっ…、くるしっ…」
はぁっと悩ましげに息を吐いた彼が名前と囁き、眉を寄せながらキスしてくる。応えるように髪に指を通してしがみつくと、腰を引き寄せられて奥を刺激され、更に浴室に響く声。
苦しいくらいのキスと律動にしがみつくしかない私に、目を閉じていた彼がふと此方を覗き込んできた。
「…感じすぎじゃ。」
口端を吊り上げくつくつ笑う彼に文句を言おうとするが出てくるのは声にならない声ばかりで、精一杯の強がりで睨んで見せる。
「1回イッとくか?」
なんて激しく揺さぶられて、待ってと言う間もなく達してしまった。ぐったりする私から堅さを失ってないそれを引き抜くと、労るように丁寧に身体を洗ってくれる。
「……雄大イッてないじゃん、ごめん。」
「気にすることないよ。ベッドで相手してもらうつもりやからの。」
青ざめる私に、「悪い思って詫び入れたんじゃろ?明日はお互い休みやし、望み通り朝までくっついとれるね。」楽しそうに言う彼が悪魔に見えた。
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