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□いい加減にしてください。
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掃除人であるためプロトポロスに入卍できずに個人的にプレーヤーとしてやってきた名前がやけに梶と仲良くなったことが門倉をいらいらさせているとは知らずに、今日も彼女は楽しそうに梶に話しかける。


「ねえねえーカジちゃん!なんかクエストやりに行こ!」


「またっすか?名前さん、僕今日はちょっと貘さんに頼まれてることあるんで…」


「じゃあ私も貘になんかやることないか聞いてこよーっと。」


その会話を近くで聞いていた門倉は横を通り過ぎようとした名前の腕を掴んだ。


「名前さん、余り嘘喰いの手伝いをしないように。」


「…だって貘はこの服も買ってくれたし、戦士にしてくれたし!ちょっとくらい手伝ってもいいでしょ?」


その服が問題なのだと言いたいが、当の本人は気に入っているらしく門倉の注意を聞こうとしない。


「もう少し露出を押さえた格好にしませんか。私が買って差し上げますので。」


彼女の格好を見て溜息を吐く。普段はスーツで隠れた脚も惜し気もなく出されているし、ちらりと覗く谷間も梶を始めここにいる男達が見る度鼻の下を伸ばしていることに何故気がつかないのか。


「私の服なんか買いに行っていたら門倉さんのお仕事の邪魔になっちゃうでしょう?それにこれ、気に入ってますし!」


もう充分邪魔しとるんじゃ!お前がおるだけでこっちは気が気やないんやけど!それにその格好他の男に見せたくないんやけど!


梶の手前その言葉を何とか飲み込み、拳を握り締め微かに肩を震わせていると、ここのところ何かと察しの良い梶が会話に割り込んできた。


「あの〜名前さん、貘さんからの頼まれ事すぐ終わるんで、僕も服欲しいし!一緒に買いに行って、そのあとクエスト受けに行きましょう!」


そう言いチラリと此方を見る梶から目を反らす。


成る程、梶と名前が一緒なら自分が監視出来るわけで。然り気無く服を変える提案までしてくれた梶に良くやったと脳内で賞賛を贈る。勝負に於いて肩入れするわけにはいかないが、1つ作ってしまった借りは何かの形で返さなければ。そう一人頷き、問題の彼女を見遣る。


了解です!と張り切る彼女を横目に苦笑顔の梶に声を掛けられる。


「門倉さんも大変っすね。」


「…はぁ、何でこんな女に惚れたんかの、ワシは。」


独り言のつもりがばっちり梶に聞かれていて、


「いや!名前さん、確かに掴み所は無いというか…難しいですけど!可愛いし!うらやま…」


「おどれに言われんでもわかっとるわ!」


もごもごとフォローする梶に被せるように凄んでみせて、早く早くと急かす彼女に二人で歩みよった。





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