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□あてられました。
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お屋形様に褒められ調子に乗っていた所を大先輩である壱號に目敏く見抜かれた挙げ句お小言を頂いて、昼食時を過ぎてしまった本部を歩いていると少し先に見慣れた裾の長いスーツを見付けてほくそ笑む。


同い年ではあるが賭朗では門倉のほうが先輩だしな。このことにかこつけて昼飯でも奢らせてやろうと声を掛けた。


「よ!門倉、お前も仕事終わりか?」


振り返った門倉の隣に女が居たことに少し驚いたが向こうは気にした様子もなく返事を寄越してきた。


「南方…そうやね、これからお昼ってとこかの。」

「…ねえ、門倉さん紹介して?」


そう言いにこやかに此方を見上げる女に、可愛いなと笑顔を返していると不機嫌そうな門倉が随分雑に紹介してくれた。


「南方や、たまに話しとるやろ?それからこいつの前では門倉じゃなくてええよ。」


門倉の言葉を聞いてぱっと明るい表情をした女は自己紹介をしてくる。


「よくお話を伺ってます。仲が良いんですね。私は掃除人の名字 名前です。よろしくお願いしますね。」


掃除人といるって事は取り立てにでも行った帰りなのか、門倉経由でお近づきになれないものか、そもそも門倉じゃなくてもいいって何だ…などと考えていると門倉が意地の悪い笑みを浮かべて牽制をかけてきた。


「名前はワシと付き合っとる。じゃけぇ余計なこと考えんように。」


こいつ!俺の下心見抜きよったなと内心溜息を吐きつつ、人のモノに手を出す趣味も無いので芽生え掛けた恋心を摘み取り、何時までも邪魔するのも悪いかと立ち去ろうとした。


「じゃあ、邪魔して悪かったな。俺、行くわ。」


すると名字掃除人が笑顔で言った。

「南方さん、もしお昼まだだったらせっかくだからご一緒しません?雄大くんとも仲良いみたいだし、ね?」

「…そやね、来るか?」


若干嫌そうではあるが門倉からも誘われ、彼女の前でかつてのライバルがどう振る舞うのか見てみたいという好奇心に負けてお言葉に甘えることにした。


近くの定食屋に入ると、自然に彼女を奥の席に座らせる門倉を見てこれは良いものが見られそうだと期待が高まる。


メニューも彼女に見えやすいよう開いてどれにするかと声を掛ける門倉。此方のことなんて忘れているのではと思うくらいだ。実際、メニューは此方からは見えない。


食事が到着してからも、

「名前、醤油使うやろ?ここ置いとくよ。」

「水いれよか?まだええ?」


だとか世話を焼きっぱなしだ。これは相当惚れているなと面白がってやにやしていると不意に名字掃除人と目が合い、話しかけられた。


「南方さん、昔の雄大くんてどんなだった?」


その質問に昔の門倉を思い出しながら今の腑抜けた門倉を比べてついつい笑ってしまう。


「少なくとも今とは全然違うな。クッ…女に優しくしてるところなんて見たことないぞ。」


睨み付けてくる門倉なんて彼女の前では怖くない。それでそれで?と楽しそうに聞いてくる彼女にヤンチャな時代の門倉の話を教えてやる。


大いに盛り上がっていたところ、放っておかれて拗ねたのか名前、名前と彼女に呼び掛ける門倉を二人して見つめる。


「そんなに昔のワシが気になるんやったら写真見せたる。今日うち来るじゃろ?」

「ほんとに?何回頼んでも見せてくれなかったのに?」

「南方と楽しそうに話すくらいやったら見せたる。」

「約束ね。」


なんてやり取りを目の前で繰り広げられ、いちゃつくなら家でやれよと思いながらも予想以上に面白いものを見られて今日は悪いことばかりではなかったなと口端を吊り上げた。


からかうネタができて満足だ。そう思いながらいまだに繰り返される二人の甘いやり取りを見守るのだった。



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