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□可愛い人
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じっと目の前でソファーに座る彼を見る。


「…そんな見られたら照れるんやけど。どないしたん?ワシの顔になんかついとる?」


「やっぱり、今日の雄大くん変だよ。優しいし。いつもなら、"なんや、誘っとるん?"って言うのに。」


はた、と固まる彼を不振に思いつつ覗き込むが目を逸らされる。


「別に。いつもこんなんやけど。」


そんなわけない。今日だって迎えに来てくれたときから普段の倍以上に優しかった。


いつも、雄大くんの家につく前にコンビニでお菓子を買う私は今日もコンビニに寄ってと頼んだところ、「甘いもん買ってあるよ。」って言うから家に着いてみれば用意してくれていたのは私が以前食べたいと言っていた有名ケーキ店の期間限定のケーキだったし。


コンビニでお菓子を選ぶ私を、そんなに食べたら太るよとか、ようそんだけ甘いもん食えるのとか言ってた雄大くんがケーキ買うために並んだの?なんて想像しただけでおかしい。


ケーキを食べるときも率先してお茶淹れてくれたし。…食べ終わった私に疲れてるだろうからってマッサージまでしてくれた。


ここまで来ると優しいを通り越して怪しい。


「なんか隠し事?」


必死に目を合わせようとしない彼の頬を両側から押さえ込むと、明らかに様子のおかしい彼に問い詰めた。


「ほんまに何もないって。それより、今日泊まって行くじゃろ?髪洗ったるけぇ、風呂一緒に入ろか。」


そこまで聞いて、私は緩む口許を隠しきれなかった。


「雄大くん。昨日、私が夕湖ちゃんと話してるの聞いてた?」


「…そんなことないよ。」


いや、嘘だ。だってさっきから彼が私にしてくれていたことは昨日の夕湖ちゃんとの会話に出ていたことばかりだった。


私の控え室に彼が用事か何かで立ち寄ったときに、遊びに来ていた夕湖ちゃんとの会話が聞こえたのだろう。でも、きっと最後までは聞いていない。勘違いした彼が起こした行動に愛しさが込み上げてついつい微笑んでしまう。


「何笑っとるんじゃ!もうこんな慣れんことせんわ!」


顔を赤くして不貞腐れてしまった彼にごめんねと謝り、


「あの会話、最後まで聞いてた?」

そう尋ねると、

「知らんわ。それで、他のやつのとこ行くんか?」


見たこともないような不安そうな顔で見つめられ、彼に悪いことをしてしまったと慌てて説明した。




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