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□第3者的見解
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門倉雄大とはどんな男か。



南方の知る限りでは、男気があって立会人としてのプライドだけでなく自分への厳しさや部下達からの信頼が厚い所など、何処をとってもいい男の一言に尽きる。はずだった。



それが近頃の門倉はどうだ。見た目には変わらない。彼の長身によく似合う長いスーツを靡かせ姿勢よく颯爽と歩くその姿だとか、男らしい身体と相反して艶やかな黒髪であるとか其処から覗く凛とした瞳だとか。正直、男の自分から見ても格好いい。



だが、決定的に違うものがあるのだ。それは最近門倉が口を開けば出てくる名前という名の女のことである。つい先日も、


「なぁ、南方。名前がな雑誌の特集ページで、今年は彼とペアリングをって記事見とったんじゃ。こっそり指輪買っておいて驚かせたいんじゃけど…サイズがわからん。」


だとか


「昨日名前に明日は早く帰って来てって言われとるけ、飲みには行けんわ。」


までならまだ良いのだけど


「…はぁ、あんなに可愛い名前が本間にわしのこと好きなんか不安になるわ。」


なんて物思いに耽る姿を度々見かける。その姿でさえも道行く女がチラ見するくらいに様になっている、のだが。当の本人は名前、名前でその事に気が付く様子もない。


指輪のサイズなど名前本人に聞いてしまえばいいのにという南方に、びっくりして喜ぶ顔が見たいんじゃという門倉、そんなサプライズなんて出来る男だったのかと驚愕する。


「…南方、名前に会わせたろか?多分天使と間違えるよ。」


なんて照れながら言う門倉が本物なのか疑うが、確めるべく身体を触ると殴られた。間違いなく本物だ。



いい年齢して初恋かと言いたくなるくらいに名前のことで一喜一憂する門倉を見ていると羨ましくなり、あの門倉をここまでさせる女に尊敬の念を抱く。自分にもそんな女が現れるだろうか。



今日やっと会わせてもらえる門倉の天使に、何時もの門倉の様子を伝えてやろうと思うだけでこの後に控える普段なら気乗りしない業務でさえ気分よくこなせる気がして少し微笑んだ。



こんなに幸せそうな門倉を見るのも悪くない。




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