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□彼の好きなところ
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普段の自分じゃ考えられないような声だとか空気に晒された素肌が冷えるような感覚だとかそれ以上に触れられる所から伝わる熱さだとか、全部、全部苦手だ。
「…はっ、名前考え事か?まだ余裕みたいやね。」
私の太股に軽く歯を立てていた門倉さんが嫌になるくらい色っぽく唇を舐めながら目を合わせてきた。恥ずかしくてすぐに目を反らすと、気を悪くしたらしい彼に顎を掴まれキスされる。
「舌、出して。」
言われるままに舌を出すとそのまま舌先を甘く噛まれた。彼のキスが苦しいのはこれからだ。噛まれていた舌が飲み込まれるように吸われ彼のものと擦り合わされる。何度も、何度も。ふいに漏れる吐息すらも逃さないと言われてるようなキスに息継ぎすらも儘ならない。
いつの間にか腰の辺りをやんわり撫でる彼の手に自らの手を重ねて
「…暗くしてください。」
そう頼むと、少しだけ眉を寄せながらも灯りを消してくれる。いつもならそうだった。
「…見たいんや。やから今日は消さん。」
羞恥に震える私を無視して、焼けるように熱い視線が身体の隅々まで注がれる。普段は手袋で隠れた指をもう言われるまでもないくらいに濡らしてしまったそこへ沈められて声が漏れた。
「…いっぁ、んん…」
的確に与えられる快感に堪えながら涙で滲む視界に入る彼が酷く色っぽくて見惚れてしまう。うっすら汗ばむ姿なんて仕事のときですら見ないのに、髪をかきあげるその仕草も相まって女の私よりも色っぽい。
「…今日は随分上の空やね。こっち見やんと拗ねるよ。」
何て可愛い台詞とともに手を握られると同時に彼が入ってきて息を飲む。繋いだ手はそのままにゆっくり動き出した彼に合わせて、自分のものじゃないような声が部屋に響いた。
くらくらするような痺れと彼の息遣いにお互いの限界を感じていると、背中に腕を回され抱き上げられて向かい合う形でキスされる。切な気に眉を寄せ繰り返されるキスの合間に
「…名前、好きじゃ、わしにも言うてくれ。」
ねだる恋人の髪を撫で付け、私も好きだよと伝えると最中とは思えないくらい爽やかな笑顔を見せてくれる。
その表現が、堪らなく、好き。
そんな言葉の代わりに目の前にある彼の逞しい肩に少しだけきつく噛みついた。
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