short


□たまには
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名前が普段から酒を飲まないので少しの下心と興味から飲みに行こうと誘い、落ち着いた雰囲気のバーで肩を並べて飲み始めたのが1時間前…




「門倉さん、いつもは恥ずかしくて言えないですけど!今日は言えます。好きです、大好きです。もっといっぱいちゅーとかしたいです…ふふー。」



真っ赤な顔をして瞳をうるうるさせて自分の顔を覗き込んでくる名前を見ながら門倉は緩みそうになる表情を引き締める。



何やこの破壊力抜群の酔い方は!




そんな事門倉が思っているなんて気づいてない名前は、聞いてるんですかー?と門倉の腕にしがみつく。




このまま何処かホテルへ誘うか、近くに丁度良いところはなかったかと頭の中で地図を広げたところで…いや、酔っ払い相手にがっつくのも紳士的やないと天使な自分が囁く。




二人は恋人同士なのだから遠慮することはないのだが、門倉は普段から名前のことを大切に扱っていた。大切に扱いすぎて遠慮気味になってしまうのだ。




ギリギリのところで天使な自分が勝利を掴み取り名前を家まで送ろうと会計を済ませタクシー乗り場までエスコートする為腰に手をやるが今しがた門倉の頭で行われた天使と悪魔の闘いを一瞬で無駄にしてしまう言葉が名前から発せられて固まり目を見開く。




「このまま帰るなんて嫌です…えっと…その…したいなぁって…だめですか?」




駄目なわけあるか。むしろ全力でいけるわ。
なんてさっき勝利した天使な自分はあっという間に意識の端へ追いやって




「今日はいつものように優しく出来る自信がありませんが、それでも宜しいですか?」



一応名前にも逃げ道を用意した。逃がす気など更々無いのだが。




「あの…いつも優しくしてくれてるのはわかってるんですけど、そんなところも大好きなんですけど、今日は門倉さんの好きにしてください。」




なんて答えられたらもう自分を保っていられず




「今の台詞忘れんといてね。今日は我慢してた分まで愛させてもらうわ。」




酔わせた甲斐があったと喉の奥で笑いながら、他の男の前では酒は飲まないよう約束させようと決め再びタクシー乗り場へ向かった。



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