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□お兄さんの思惑
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久し振りの賭郎勝負に緊張するのは仕方のないことかもしれないが相手があの嘘喰いとあらばその緊張も膨れ上がるというものだ。



相手から指名されていると賭郎を通して連絡を貰ったときに断ればよかったのだが嘘喰い見たさの好奇心に負けてしまいこの賭けを承諾した。



場所は某高級ホテルのスイートルームで殺伐とした雰囲気もなく、真っ白なお兄さんに勝負が始まるまでお茶でもしようよとにこやかに微笑まれて幾分か緊張も解け嘘喰いサイドの立会人である夜行さんが淹れてくれたお茶でティータイムを楽しむ。



此方の立会人が少しばかり遅れると言うので時間をずらしてもらおうかと考えていた所、夜行さんが安全を約束するので先にホテルまでいらしては?と迎えとこのティータイムを設けてくれたことに感謝しつつ、相手のお兄さんの様子を窺う。



「えっと、お兄さんが嘘喰いなんですか?」



私の質問にまたまたにっこりと微笑んだお兄さんは



「嘘喰いねぇ。そう呼ばれてるみたいだけど、君には貘って名前で呼んでもらえると嬉しいかな。名前ちゃん。」



もうすぐ到着するであろう門倉さんとはまた違う色気を感じて少し気恥ずかしさを覚える。



「あの、私貘さんの求めるような賭けが出来るとは思えないんですけど…今日指名されたのはどうしてですか?」



「失敬っ!少し遅れてしまいまして。今回、名字 名前様の担当をさせていただきます門倉 雄大です。」



私の言葉に被せるように、部屋に入ってきた門倉さんがその場にいた私達に挨拶をするとこちらに向かって微笑んだ。



夜行さんがお茶のセットを片付けながら先程の私の質問の返事を貘さんへと促してくれる。



「斑目様、先程の名字様の質問は今回の賭けの代償としてで私が門倉立会人と話をつけると言うことで宜しかったでしょうか?」



貘さんをチラリと見る夜行さんの様子を見て、なんだ夜行さんはもう貘さんの目的も知っていたんだと納得する。任せたよとやり取りしているのをボーッと見ていたら隣に立っていた門倉さんに睨まれていた。どうして。



「名字様、斑目様は今回貴方に貴方の時間を賭けてほしいと仰っていますが如何でしょうか?」



夜行さんが私を見て言った台詞にその意味を考えて質問をしようとしたら横から



「…は?時間とは?いつかの賭郎勝負のように過去のアリバイみたいなものでしょうか?」



門倉さんが先に質問した。



「そんなんじゃないよ。いやね、名前ちゃんの未来の時間。はっきり言うと、俺と二人で過ごしてほしいなぁなんて。そーゆーことね。」



色気たっぷりな流し目で私を見た。きっと私にしか分からないほどの不機嫌さを漂わせた門倉さんが



「それはつまり名字様の身体が目的ですか?」

鋭く突っ込む。



「あーやだやだ。そんな殺気込めて睨まないでよ門倉さん。そんな下世話な話じゃないよ、安心して。ただ、うちの梶ちゃんが名前ちゃんのこと気に入ってるみたいだからどんな子かなーなんて興味が、ね。」



「そういうお話でしたら、名字様如何なさいます?」



不機嫌さを拭いきれない門倉さんが私に問い掛けてくる。



「わかりました。えっとそれで私が時間を賭けて、貘さんは何を賭けるんですか?」



私がわかったと言った瞬間の門倉さんの額に浮かんだ青筋は見ないことにして貘さんに聞いた。



「こちらは名字様のお時間1時間に対して100万円賭けるつもりです…よね?斑目様。」



夜行さんの返事に私はびっくりしてそんなにと呟こうとすると隣から聞こえた舌打ち。



「それでは些か安いのではと思いますが、名字様宜しいのですか?」



私の1時間に100万円なんて。どんな物好きが払うのだと心の中で苦笑しながら、それでいいとの旨を伝える。門倉さんからのじっとりした視線を感じながらゲームの内容をどうするか話し合う立会人二人が




「門倉立会人、些か名字様への私情を挟みすぎでは?」


「ご忠告有難う御座います。ですが御大、賭けるものに関しては名字様は女性ですのでこちらである程度保護させてもらうのが妥当かと。勝負が始まってしまえばこの門倉、しっかりと中立を保つ所存で御座いますのでご安心を。」



「素直でないですね。まあ、今回の賭けは嘘喰いも運に任せた物で勝負するつもりのようなので公正な勝負になるでしょう。」



なんてやり取りをしていたことを私は知らない。


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