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□きみの心に触れさせて
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両手の人差し指と親指をLの字にして、写真を撮る振りをした名前ちゃんが、華奢な指に縁取られた四角から笑顔を見せた。


「名前ちゃん、何してんの?」

「貘さんを記録してるの。」

「何それ〜?」


クスクスと楽しそうに笑う彼女を引き寄せ、腕の中に閉じ込める。嗚呼もう、可愛くて堪らない。


「こうやって一緒に過ごしてる時間にタイトルなんてないけどね、写真にすると思い出すじゃん。」

「携帯で撮らなくていいの?」

「私の好きな貘さんは、カメラを向けたときには見られないの!」


ほら!そう言ってもう一度カメラを形作り、此方へ笑顔を見せる。頬と口許が弛むのを感じながら、今自分がどれほどだらしない顔をしているか想像して、気恥ずかしい気持ちになった。


「今のその顔が好きなの。」

「……カッコ悪い顔してたでしょ。」

「ううん。優しい顔してた。」

「ギャンブルしてるときの方が凛々しくて男前だよ。」


わざとらしくキメ顔を作って彼女を見た。


「……ダメだよ。」


そのままぎゅうと抱き着いてきた名前ちゃんの頭をあやすように撫でる。


「……名前ちゃん。いつも心配かけてごめんね。」

「……別に。心配なんてしてないけど!」

「嘘だぁ!」

「ほんとだよ。もし貘さんが敗けてどっかいっちゃっても、私は梶ちゃんと付き合うんだから。」


冗談ぽく笑う名前ちゃんをもう一度抱きしめ、耳元で囁く。


「駄目だよ。梶ちゃんにはあげない……嘘、誰にもあげない。」

「誰にも?立会人の人達とか素敵だなぁ!」

「名前ちゃんの意地悪!」

「嘘うそー!貘さんが1番格好いいよ。」


今日1番の笑顔を見せてくれたその頬に唇を寄せた。





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