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□触れたら溶けると思います
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まだ梅雨が明けたばかりだというのに、この暑さ……スーツなんてきっちり着こなしてられないと、普段はパンツスタイルの私も、たまには女らしくていいじゃない、そんな思いでスカートを身に着けた。


立ち会いの予定は入っていなかったので報告書に目を通して、フリーの立ち会いが入りそうなら担当しようと本部へ向かう。


「おはようございます。苗字立会人、スカートなんて珍しいですね。」


聞き慣れた声がやけに丁寧に話し掛けてきたことへ少し警戒心を抱きながら言葉を返した。


「門倉立会人、おはようございます。今日は暑いのでたまにはスカートも良いかなと思いまして。」

「魅力的で良いんじゃないですか?」


ありがとうございます……強引に上を向かされ開き掛けた唇を彼のもので塞がれたせいで最後の言葉は二人の吐息に混じって消えた。すぐ目の前にある彼の顔と、射るように合わせられた目に恥ずかしくなり目を逸らす。人の目を気にした私は彼の肩を押し返したけど、その手を逆に取られてしまってそばにあるドアへと押し付けられた。


「……っ!雄大、何っいきなり。」

「誰がそんなスカート履くの許可したん?」

「スカート履くのに許可なんているの?」

「短かないか?」


誰もそんな目で見ないよ、小さく呟いた言葉も熱い口付けに飲み込まれてしまって息をするのも儘ならない。


「……っはぁ!」

「この後、立ち会いか?」

「ううん、フリー待ちの予定。」

「なら、ワシと一緒に帰宅やね。」


きっと拒否の言葉は通じない。私から離れた雄大をじっと見つめて、ドアに預けていた背中をそこから離そうと脚に力を入れた。


「ちょっと!何っ、んんっ!」

「これ、見られてもええんやったらスカート履いたら?」

「……履けるわけないじゃん。」

「クッ!」


目の前でしゃがみこんだ雄大が膝にちゅっとキスしたと思ったら、そのまま太ももまでゆっくり舌を這わせてスカートの裾ギリギリの所にキスマークを付けた。しかも思い切り。


赤を通り越して紫のその跡を指でなぞって、「ばか!」と罵るけれど返ってきたのは満面の笑みと「妬いたわけちゃうよ。」そんな小さな嘘。


歩き出した広い背中に飛び付いて、ほんのり紅く染まった耳へ囁く。


「……さっきので、したくなっちゃったんだけど。」

「は!えろいこと言うなや。」

「ダメ?」

「売っとるんか?ダメなわけあるか。」

「暑いから部屋涼しくしてね。」

「そんなんしてもすぐ暑くなると思うけど。」


これからたまにはスカート履くのも良いかもしれない、なんて口に出したら彼はどうなるだろうと想像して溢れる笑い。


「笑ってられんのも今のうちじゃ。」


悪戯に笑う雄大と手を繋いで本部を後にした。



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