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□どうしようこの人かわいすぎる
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誰もいなくなった本部の事務室で仕上がったばかりの報告書を確認した後、バッグから小さな箱を取り出してじっくり眺める。


宝石箱のようなそれにうっとりして、ゆっくり蓋を空けると広がる甘い香り……バレンタインのチョコだ。


見ているだけで幸せになるような繊細なデザインのチョコの数々。綺麗に並んだ一粒をそっと摘まんで口へ運ぼうとした時に掛けられた声にびくりと振り返った。


「名前!こんな時間まで仕事か……?」


「門倉立会人……また名前って呼ぶ。もう門倉立会人の部下じゃないんですよ!」


「おお!それは悪かったの、苗字立会人。一丁前に立会人やもんね。」


にやにや笑う彼が私の手元に視線を移して掌を此方へ突き出してきた。


「チョコか。今日、バレンタインやもんね。悪いの。」


「門倉立会人のじゃありません!自分用に奮発して買ったんですぅ!」


「ケチくさいこと言うなや。ほら、寄越せ!」


伸びてくる腕からチョコを遠ざけ彼を見ると、紙袋を持っている。私の視線に気づいたのかふうと息を吐いた彼は紙袋を持ち上げて私に差し出してきた。


「これな、今日呼び出された会員と事務のやつらに貰ったんじゃ。欲しけりゃやる。」


「だめですよ、それは女の子達が門倉立会人にくれたものでしょ。」


「さっきから門倉立会人って他人行儀やの。前みたいに雄大君って呼べや。」


じとっと恨めしそうに唇を尖らせて言う彼に従い慣れ親しんだ呼び方で話を続けた。


「雄大君はこんなにチョコ貰ってるんだから、私のささやかな自分へのご褒美までいらないでしょう。」


「ワシもそれがええ。これと交換じゃ。」


ぐいと紙袋を押しやる彼に、全く我が儘だ、と呆れて中身を覗いた。


「……私のと同じお店のチョコ入ってますよ。しかも私のより数が多いの。」


「なら、ええやろ。交換しても。」


「なんでそこまで……。」


引き下がる様子のない雄大君からしぶしぶ紙袋を受け取り、手元にある箱を渡そうとすると首を振る彼を不思議に思って見上げた。


「……っ!」


「ごちそうさん。」


目を合わせながらどんどん近づいてくる雄大君の顔にドキドキしていると、さっきから摘まんだままだったチョコをパクっと食べられた。もぐもぐとチョコを味わったあとに唇を舐めた彼に見惚れて顔を赤くしてしまう。


「……食べたかったやつなのに。」


「それがええって言うじゃろ。」


「食べようとしてたやつですよ。まだ箱に新しいのあったのに。」


「うるさい。」


ぷいっと背を向けて出口へ向かっていく彼がドアを開けて此方を振り返った。


「早よ帰るよ。送ったるから。」


「雄大君はここに用事あったんじゃないの?」


「……無いけど。」


もしかして、チョコ貰いに来たの?なんて聞いたら睨まれるだろうか。





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