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□だから待ち合わせが好きなんです
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私の彼氏は目立つ。何処にいてもすぐに姿を見つけられる、それくらい目立つ。まあ、大雑把に言ってしまえば格好いい


今日だって待ち合わせに少し遅れた私の目に飛び込んで来たのは、きゃぴきゃぴした女の子二人組に話しかけられている貘さんだった。


「お兄さんモデルかなにかー?」

「ただのニートだよ。」

「あはっ!おもしろ〜い!……それよりさ、名前教えて?」

「……やだ。」


貘さんが断ったことにホッとしながら、彼に近づいていくと女の子達と目があった。あからさまな"何この女"って目線に耐えながら彼に声をかけようとしたとき、聞こえた楽しそうな声。


「名前ちゃ〜ん!寂しかったよ、ホント、会いたかった。」


わざとらしく此方を見上げながら手を取り引き寄せてきた貘さんは女の子達に「そういうことだから。」と私を抱き締めたまま言った。


女の子達が去っていったあと、ふうと息を吐いた貘さんが私を見つめてくる。


「……怒ってるの?」

「怒ってないよ。」


怒ってるかと聞かれれば、怒ってない、本当に。けど、やっぱりデートの待ち合わせ場所で彼氏が女の子にナンパされてたら気分は良くない。


「これからは貘さんの泊まってるホテルまで迎えに行くよ。」

「……駄目だよ。」

「なんで?場所わかるよ?」

「場所とかじゃないの!とにかくだめ!外で待ち合わせしよ、ね?」


頑として譲らない雰囲気の貘さんに理由を問いただしても教えてくれない。


「……貘さんなんてキライ。」

「え!?どうしてさ!なんでそうなるの!?名前ちゃん!?」

ボソッと呟いた私の言葉に過剰反応した貘さんは慌てふためいて、さっきまで渋っていた待ち合わせしたい理由を驚くほど早口で話始めた。


「名前ちゃんさ、デートの時お洒落してくるでしょ?」

「そりゃあね。」

「メイクも髪も、それに良い匂いさせてくるでしょ?」

「……それなりにね。香水もつけてるよ?それが何?」

「わかんない?……そんな名前ちゃんが部屋まで来たら、もう外に出るの嫌になっちゃうでしょ!」

「……は?」

「だから!他の誰にも見せたく無いし、独り占めしたいし……触りたくなるの。」

「つまり?」

「デートって言ってんのに、部屋でいちゃつくばっかりになったらやでしょ?」

「……嫌かも、しれない。」

「ね、待ち合わせじゃなきゃ駄目でしょ?」


聞いてて呆れる理由に溜息を吐いていると、真剣なんだからと拗ねたような声が聞こえてきたので、彼を見つめる。


「貘さんが我慢すればいいんじゃないの?」

「出来ない自信があるから言ってんの。」

「……私も、ナンパされてる貘さん見るの嫌だよ。」

「俺、名前ちゃん以外見てないでしょ。」

「私がナンパされたらどうすんの?」

「名前ちゃんより30分前に来てるし。」

「……バカじゃないの。」


さらりと言われた言葉に気恥ずかしくなって彼を置いて歩き出す。


「ねえ、まだ俺のことキライって思ってるの?」

「そうだよ!」

「……嘘つき。」

クスクス笑う貘さんが手を繋いできて、「さ、気を取り直してデートだよ。」そう言って笑顔で私を見た。




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