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□平行線をたどる日々
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「ね、門倉立会人は最近いつキスしました?私……随分してないなぁ〜!」


「……言わせて頂きますが苗字立会人、私は貴女の事が好きだと1ヶ月ほど前に伝えたはずですが。」


呆れ顔の門倉の隣で楽しそうに訊ねる名前は「そうでしたっけ?」なんて唇に指を当てながらとぼけた様子を見せた。


門倉からしたら、ついこの間告白をした相手にこんな質問をされるなんて、先送りにされた自分の告白への返事をひねくれた形でされたようなものだと眉間に皺を寄せる。


一方、名前はというと本当に忘れていたのかモジモジと照れる素振りをしながら言い訳を始めた。


「だってね?門倉立会人ってこう……男臭いと言いますか、ほら!部下の人達に"雄大君!"って囲まれてるイメージで、女性の影を感じないものですから、ねぇ?」


本人は照れているようだが言っていることはなかなか………


「つまり、私にそっちの気があるとお思いでしたか。はっきり言っておきますけど、私は至ってノーマルです。それと、しつこいかもしれませんが、苗字立会人……いえ、名前さん。貴女が好きです。」


さっきまでの軽口を叩き合う雰囲気をぶち壊すかのような門倉の熱の籠った視線を存分に浴びた名前はいよいよとぼけるのも難しくなったように真面目な顔をして言葉を紡いだ。


「本気ですか?門倉立会人が本気で私の事を好き、だと仰ってるんですか?」


「ええ、本気です。それこそ、随分とキス……していないのでしょう?私で良ければ喜んでお相手させていただきますが。」


ストレートな誘いに顔を赤くさせてうつむく名前との距離を詰め、逃げ場がないよう名前を壁と自身の間に閉じ込めた門倉は更に顎を持ち上げ上を向かせ反応を待つ。そしてトドメだとばかりに耳元で囁いた。


「私も、随分としていませんね……キス。名前さんとしたいです。」


「雄大君信者に、殺されちゃう。」


「何ですか、それ。」


再び呆れ顔の門倉の胸をトンっと押して腕の中から逃げ出した名前は「じゃあ、私そろそろ時間なので〜!」と門倉に背を向けた。


恨めしそうな視線を背中に感じながら素知らぬ顔で扉を開けた名前の目に、不謹慎な笑顔を浮かべる門倉が映った時には手を引かれて頬に柔らかい感触。


「……っな!」


「次、ご一緒した際には私の告白の返事をお聞かせ願えますか。それと……次はここに。」


ちょん、と手袋をした指先が下唇に触れて離れると、門倉のほうが先に控え室を後にした。




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