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□それ、本気で言ってるんですか
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「ばか!もう門倉さんなんて知らない!」
「おお!上等じゃ!勝手にせぇ!」
ふん!とお互い背を向けて向かった先は何でも聞いてくれる友人のもと。
「…でなぁ、南方!そんで名前のやつ何て言うた思う?」
「わからないな。」
「"初めて見たけど嘘喰いが想像よりかっこ良かった"じゃと。かっこ良かっただけでも気に入らんのに、想像よりて何じゃ!」
「お前、それ唯のヤキモチ……」
「ああ"!?何や文句あんのかおどれ!」
「や、何でもない。」
話を聞かされた南方は、結局は門倉の嫉妬だと指摘しようとしたところを凄まれて、再び黙って怒り狂う同僚を見つめた。
「あいつ!ワシがいくらベタ惚れやからって、他の女に気ぃ向かん思っとるんちゃうか?油断しとったらワシかって浮気の1つや2つ……」
もうベタ惚れであることまで認めてしまっているかつてのライバルを何とも言えない気持ちで眺めていた南方だったが、近付く気配に気付いて慌てて立ち上がり門倉の口を塞ぐ。
突然、南方の掌を口許へ押し付けられた門倉が彼の鳩尾に拳を入れたと同時に聞こえた後ろからの声に、ぎこちなく振り返った。
「クイーンに言われて…私も悪かったって謝りに来たけど、必要なかったみたいですね。」
待てという声も覆われた口からでは聞こえなかったのか、無視されてしまったのか…走り去った名前を見つめる男二人。
じとっと睨み付ける門倉と手を退けて鳩尾を抑えてしゃがみこむ南方。やがて口を開いた門倉からの言葉に、何で俺がと反論する間もなく喫煙所から蹴り出された。
「…おどれのせいじゃ。ワシは浮気なんかせん。乗せられて言っただけやて説明してこい。」
1人取り残された門倉は煙草に火をつけては灰皿に押し付ける作業を延々と続ける。軽くなっていく箱が空になった頃に響いたハイヒールの音に気付いて舌打ちをして開くであろう扉を睨み付けて構える。
予想通り現れたクイーン…基、最上が喫煙所に蔓延している煙を払い除けながら近付いてきた。
「名前と仲直りなさらなかったの?門倉立会人。あんまり大人げないようでしたら、彼女、いただきますわよ。」
「はん!名前はワシ以外見とらん。」
「…わかっているなら、下らない嫉妬などぶつけなければいいのに。」
「うるさい。」
腕を組んでクスクスと見下ろすクイーンが気に入らなかったのか、立ち上がり逆に見下ろす門倉が扉に近付く。
「あいつはワシのもんじゃ。今もこれからも、ずっと。」
南方に説き伏せられて戻って来ていた名前が反対側で聞いているのを門倉はまだ知らない。
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