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□下心のない男なんていると思ってたんですか?
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晴れて始まったお付き合い。といってもお互い忙しくなかなかゆっくりデートする時間も取れずにやきもきしていたところ、依頼された賭朗勝負の立ち会い。



相手方の専属が名前だったことに嬉しさを感じて、現場までの車は一緒でいいと運転手に告げる。



車で彼女を待つ間、想像以上に楽しみにしている自分に気付いて苦笑しながら舌先で風船を作って遊んでいると慌ただしく車に乗り込んでくる彼女。




「あっ!車は1台って聞いて、誰が立ち会うのかなって思ってたらちゃんみだだったんだ!やったぁ!」



無邪気に笑う彼女に此方まで笑みが溢れるが、よくよく考えてみると不用心な言葉に下降していく此方の機嫌。



現場までちょっと遠いねと話し掛けてくる彼女を無視していると、戸惑ったように瞳を揺らしながら覗き込んできた。



「…どうしたの?なんか怒ってる?」



「ええ、とても。」



「え、どうして。折角一緒の現場なのに。」



こういう素直な所が、彼女に惚れた由縁なのだが…こういう素直な部分に苛つく自分も否定できない。まあ、ただの嫉妬心なのだが。重い溜息混じりに、此方の様子を窺う彼女に説教染みた言い方で述べる。




「どうして車が1台と聞いたのに、一緒に向かう相手が誰だか確認しないんです?私以外の男とでも現場までの時間、この狭い車内で過ごすおつもりでした?」



「や、あんまり深くは考えてなかったけど。1人で行くのも退屈だし、誰か話せる仲の人なんだなぁって。もちろん!ちゃんみだだったらいいなって思ってたよ!」



取り繕うように返す彼女にこれ見よがしにがっかりした様を見せつけて続けた。



「…あの私の猛アプローチも、他の男からでも結果は同じだったのではと心配になります。」



「そんな事は…ないよ。ちゃんみだとはもともと仲良く話してたし、優しくしてくれてるのも気付いてたし、無意識だったけど、好意は持ってたと思うよ!」



必死にしてくれる弁解が余計に心に突き刺さる。せめてはっきり言い切ってくれれば良いものを…だが、彼女なりに自分の事を思ってくれているのは伝わってきたので妥協するかと目を閉じる。



ただ、彼女の警戒心の無さはこれからも心配だし、変な男に騙されないように充分言い聞かせる必要があるなと結論付けて言う。



「そこですよ、名前さん。優しくしてくれるとか…仲良く話すとか、大抵の男は下心で行いますから。私のものになったのだからきちんと自覚してそれらしい態度で他の男には接して下さいね。」




それを聞いて目をパチパチさせた彼女は言った。



「ほんとに友達とか、頼れる仲とかそういうのもあるでしょ?私達も最初はそうだった……」



被せるように、「いいえ、私ははっきりとした下心を抱いてましたよ。」と言ってやるとそうだったのかと驚いている。




「下心のない男なんていると思ってたんですか?」


これからは気を付けて下さいと抱き寄せて、運転手さんがと恥ずかしがる彼女の唇を奪った。



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