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□純粋な少年を演じるのにはもう飽きただけです
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「ちゃんみだっ!」


またか、と弥鱈は飛ばした泡を見ながら溜息を吐く。いつだったか嘘喰いに呼ばれた下らない渾名を彼女は存外気に入ったらしく、しつこく使ってくる。



そもそも彼女はあの場にいなかったはずなのに…そう思って情報源を探ると八號の能輪が彼女に吹き込んだようで、あの時蘇生の余地を残した自分に後悔した。



ちゃんみだと呼びたいが為に何かと絡んでくる名前。だが彼女のことを密かに狙っている弥鱈は文句を言いつつ結局は相手をするし、満更でもない様子だ。




「それで、今度は何の用ですか?」




背中に飛び付いてきた彼女が落ちないよう支えながら聞いてやる。




「何もないけど、暇だったから。ちゃんみだも暇でしょ?」




「生憎、貴女のように暇ではありません。」



素直じゃないのは自他共に認めるところだが、此方の返事を気にも留めない様子でけらけらと笑いながら返してくる彼女に苛つくどころか、どうしても甘くなってしまう事に気付いたのは随分前のことだ。そして、彼女が好きだと自覚したのはいつだっただろうか。




「知ってるよ、立ち会いキャンセルになったの。」




背中から降ろして向かい合いこれでもかと眉間に皺を寄せて見せるが、やっぱり彼女に効果は無いようで。




「だから構って?」




弥鱈が口を開くよりも先にそう言って正面から抱きついてくる。どうしてこんなにもスキンシップが多いのか。



弥鱈にとっては嬉しいことだが、彼女の貞操観念について懸念してしまうと同時に、どうしようもない独占欲が胸の奥を支配する。




「無理だと言ったら?」



「門っちのとこ行ってみる。」



「…それで門倉立会人にもこうして飛び付くのですか。」



「門っちには飛び付かないよ。ちゃんみだにだけ!」




その言葉を聞き、どうして自分にだけ…そう思いながら男として意識されていないのだなと溜息の代わりに風船を飛ばして彼女を抱き締めた。




抱き締め返すのは初めてのことで、驚いたように見上げてくる顔に自らの顔を近づけ唇同士が触れる寸前で止める。



「…ちゃんみだ、どうしたの。なんか変だよ。」



「私だって男ですから。」




頬を染める彼女に満足気に微笑み、そっと鼻先に口付けた。





純粋な少年を演じるのにはもう飽きただけです。



続き………前と同じ距離なのに、どうして"近すぎる"んですか?

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