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□追いかけると逃げて行くらしい
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梶ちゃん発案の作戦通りに勝負の場に立会人を呼ぶ。電話に出た誰だかわからない男の人に名前ちゃんの名前を言って、空いているかを確認するのも怠らなかった。


取り次ぎ相手は彼女を直ぐに向かわせると言って通話を終了させたのに…、目の前に佇む立会人に隠しもせずに怪訝な顔をして見せる。



「私の立ち会いでは都合が宜しくありませんか、貘様?」


ニッと好感を持たせようとしているとしたら勘違いも甚だしい笑みを浮かべて仰々しくお辞儀され乾いた笑いを返す。


「…そりゃあもう、すごく、困るよ。」


「おや?どういった理由で?」


有無を言わさぬ眼光に嫌な汗が滲むのを感じながらも余裕を装って足を組み換えた。


「こないだね、名前ちゃんとの賭けに負けちゃってさ。まだ取り立てが済んでないの。そのままってのも落ち着かなくて、ね。この機会に、と思ったんだけど門倉さんが来たらそれも果たせないじゃない?」


ふぅむ、なんて言いながら大袈裟に考え込む素振りを見せた彼は閃いたようにポンと手を叩いて近づいてくる。


「代わりに取り立てましょうか、それで貘様の心配事も無くなりましょう。」


「…名前ちゃんにしか取り立てられないものだから。」


沈黙が続く。お互いに相手の出方を待っている様だが、そもそもこの探り合いの意図が読めない。まさか目の前の男は夜行さんの息の掛かった者なのか…


膠着状態が続いたが、門倉さんがやけに柄悪く煙草を吸い出したのでぽかんと見つめてしまう。


「失敬!こちらの方が話しやすいので、お嫌いなら辞めますが。」


いいよ、続けて。彼に先を促すと此方に向かって煙を吐き出してからさっきよりも声のトーンを低くして話し出した。


「貘様、うちの苗字立会人にちょっかいを掛けようとしているらしいですね…。ですが、今回ばかりは思うように事は運びませんよ。彼女を狙う輩は多いと覚悟なさって下さい…ライバルだらけです。」


「それって、門倉さんも含まれるの?」


「お察し下さい。」


目を細めて口許を吊り上げた彼に、はっと笑いを溢してやだやだと呟いた。


「…じゃあ俺の今回の呼び出しは伝わってないわけ?」


「いいえ、貘様。この門倉流石にそこまでの勝手は致しません。苗字立会人から頼まれたのです。」


「どういうこと?」


「だから、苗字立会人が貘様の立ち会いを断って私に頼んだ。そういうことです。」


「どうしてさ?」


「さぁ、私にはわかりかねますが。」


今度は此方が大袈裟に考え込む番だった。どうして、名前ちゃんに避けられるのだろう。困らせるようなことはしていない…はずなのに。夜行さんやちゃんみだに號数を聞いたことがまずかったのか。


「今まで彼女に言い寄った男が上手くいった試しはございませんよ。」


そう教えてくた門倉さんに、


「お互い苦労するわけだね、まあ何にせよ俺が勝つ勝負だ。」


自信満々に宣言した。



追いかけると逃げて行くらしい


続き………うまく育てると愛に進化するらしい


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