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□お金では買えないらしい
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戻ってきた名前ちゃんは携帯電話片手に困った顔をしていた。


「貘様…相手方の立会人に連絡を取ったところ、会員が現れないので此方に向かえないと。」


彼女のせいではないのに申し訳なさそうな顔をするところも可愛いなと思いながら、いいよいいよと口にする。


取り仕切る勝負もないので帰ろうとする彼女を呼び止めた。


「ねえ、折角来てくれたんだしさ。これも何かの縁だと思わない?」


「はあ。そうですかね。」


「絶対そうだよ。だから簡単な賭けしない?」


「いいえ、貘様。お断りさせて頂きます。」


間髪入れずに断る彼女に尚も食い下がる。ここで帰られては彼女との仲も縮めることは出来ない。何事も最初が肝心なのだ。


「そんなつれないこと言わずにさぁ。ね?ちょっとだけだって!せめて賭けの内容くらいは聞いてくれてもいいんじゃない?」


しゅんと音が鳴りそうなくらい落ち込んで見せて上目遣いに見つめると、溜息混じりにだが話は聞いてくれるようで近くにあったソファーに腰掛ける彼女。


「…それで、賭けの内容とは?何をするのですか?」


「…何でもいいんだけどね、たださ、俺が勝ったら1つだけ聞いて欲しいお願いがあるの。」


「…お願いですか、立会人として聞くものは対処致しかねますので。やはりこのお話は………」


「待って待って待って!立会人の名前ちゃんに何かしてもらおうなんて、これっぽっちも思ってないから!ね?」


「それなら、……何が目的ですか?」


「俺が勝ったら、ただの女の子として!デートして欲しいなぁ…なんて、ダメ?」


少し考える素振りを見せる彼女にここぞとばかりに口を開く。


「それくらいいいでしょ!?ね、デートしてくれたら何でも買ってあげるし!良いことだらけじゃない?」



「…貘様が勝つとは決まっておりませんが。」


「乗ってくれるのね、何で勝負する?ポーカーとか?」


どうやら賭けをしてくれるらしいので、気が変わらないうちに始めようと勝負内容を尋ねると、初めて見た時とは少々雰囲気の違う挑発的な笑みで見据えられて、心音が増大していくのを止められなかった。



「お言葉に甘えて………ジャンケンで勝負致しましょう。この苗字 名前、女に二言はありません。負けた場合は貘様とデートさせて頂きます。」


「ジャンケン…ね。俺がジャンケン弱いの知ってたりした?」


「いいえ、存じ上げませんでしたが。弱いのですね、ジャンケン。私が勝ったら……まあ、勝ったときに決めます。」



ジャーンケーン!という声が部屋に響き渡る。少し間を置いて床にしゃがみこんだ大の男。


「名前ちゃん、やっぱり俺がジャンケン弱いの知ってたでしょ。ずるいよ。」


クスリと笑った彼女は知りませんよと言い残し扉へ向かう。後一歩のところで此方を振り返り、


「私の勝ちですね、貘様。この件に関しての取り立ては後日という事で大目に見ておきます…それと、何でも買ってあげるなどと言う言葉で靡くような女ではありませんので、悪しからず。」



去って行った彼女を見てから隣の梶ちゃんを見上げた。



「ねえ、梶ちゃん、脈あるかな?」


「………ないんじゃないっすか?」


「…嘘つき!」




お金では買えないらしい



続き………勝手に大きくなるのを止められないらしい

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