22Kiss

□足の甲…隷属
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彼の機嫌が悪いことは何となく雰囲気で察していたのだけど、玄関の扉を開いた瞬間壁に押し付けられ息が出来ないくらい長い間唇を塞がれたあと、寝室に放り投げられるように押し込まれたことには少なからず驚いた。


「ちょ、待って、かどっ…」


口付けというよりは噛み付くと言った方が正しいそれに、言葉を紡ぐことも出来ずにされるがまま。僅かばかりの抵抗も体格でも力でも負けている私がしたところで無駄に終わる。


乱暴なキスの合間に服の中に入ってくる手袋をしたままの彼の手に無遠慮に胸を掴まれ声を上げる。


「やっ、だ、いたっ」

「…嘘喰いに誘われたらしいね、部下から聞いたよ。名前からは聞いとらんけどね。」


不機嫌な理由はこれかと納得し説明しようと口を開いたところで、また深く口付けられる。

「…んんーっ、ね、聞いてっ」

「このまま泣くまで可愛がってもええけど、それやったら仕置きにならんしの。」


愉しそうに笑う彼の右目に今更ながら自らの危機を感じているとベッドへ組み敷かれ先程までのキスとは比べ物にならない優しく蕩けるようなキスが降ってくる。


危機を感じた癖に、いつもの優しいキスの余りの気持ちよさにぼうっとしているといつの間にか服を脱がされ身体中に愛撫を受けていた。


私よりも私の身体に詳しい彼に高められるなんてあっという間の出来事で高い声を上げるしかない私に眼を細めた彼は急に行為を中断し

「ほれ、どうして欲しいか言うてみ?じゃないとわからんよ。」

と意地悪く嗤う。


今の今まで彼から与えられていた快感に限界まで追い詰められていた私は、恥ずかしさともどかしさで涙が滲んで言葉を発する事が出来ずに首を振る。


私の足元に顔を寄せ爪先から膝まで舐め上げ、そこにキスを繰り返す彼と目が合うと妖しく嗤う彼が足の甲に軽く唇を寄せた。


「名前が言うたことしかワシはせんからの。ほらワシに命令するんじゃ。……何も言わんならこのままやめるか?」


ここまできて止めるなんてそんな事、お互い出来るはずもないくらいに身体は火照り更なる快感を求めている筈なのに、足に触れる彼の唇は私の体温より幾分も冷たい。その温度差に立場を思い知らされている気がして悔しさが込み上げるが、我慢することも出来ず素直に彼を欲することにした。


「門倉さん、もう、いれて。」


羞恥に犯されるより早く彼が入ってくるのを感じて声を上げる私の身体に、次に待つ快感は訪れず彼の顔を見上げる。


「…ほら、入ったよ。次はどうして欲しいんじゃ?」


意地悪な彼に再び涙を浮かべるが、きっと、本当に、私が言うまで何もしてくれないだろう、彼の発する空気が物語っている。


ここまでの恥ずかしさも、これからの恥ずかしさもどちらも同じことだと、それよりもこの身体をどうにかしてほしくて再び懇願の言葉を口にする。


「…動いて、もっと、気持ちよく、してください。」


私の言葉に満足したのか、耳元で

「よく出来ました、褒美や。」

と囁かれたと思ったときには激しく揺さぶられ頭が真っ白になり、もっとゆっくりと頼む声は彼には届いていないようだった。



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