22Kiss

□胸…所有
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カラカルにピーチ…その豊満な胸をわし掴まれた湖江さんの話を丈一さんにしていると小馬鹿にしたような顔でチラリと私の胸元に目線をやったあと言われた台詞にカチンと来て彼の言葉に被せるようにして叫んだ。


「…はっ!湖江のことはどうか知らんが、名前…お前のは武器にもならんな。まあ、それでも………」


「私のだって武器になります!証明してやるんだから!後から怒っても知らないですよ!」


おい待て、何をするつもりだ。と言う彼を無視して車を飛び出した。自宅のベッドの上に下着を並べて、以前友人とふざけて買ったかなり盛れるタイプのものを身に着ける。


これでもかと寄せて上げて、しっかりと谷間を作り胸元の開いた服を着る。


誰をターゲットにするべきか、考えながら賭朗本部に戻ると入り口付近に人の影を見付けて駆け寄る。私の足音に気付いたのか振り返って待ってくれている丈一さんと同じ顔の彼に微笑んだ。


「夜行立会人、お疲れ様です。立ち会い帰りですか?」


私の格好を見ても顔色1つ変えない彼に、相手が悪かったと次なるターゲットを思い浮かべている途中聞こえた咳払いと物腰柔らかな声にはっとして彼を見つめる。


「ええ、たった今帰って来たところです、名前さんもお疲れ様です。ところで名前さん、随分刺激的な格好をされていますね…。この老いぼれの心臓には些か堪えますよ。そんな格好をしなくても充分に男を惑わせているのですから、それ以上魅力的な姿を見せるとあいつが嫉妬するのでは?」


そう言いながら彼のスーツを肩に掛けられる。間違えるほどよく似た二人なのに、こうも違うのは何故だろう。そう思ってしまうくらい紳士的な言葉と行動に頬が熱くなるのがわかった。


「すみません。丈一さんにピーチ…いえ、私の胸に魅力がないと言われて、それで…」


する必要のない言い訳をもごもごとする私の肩にそっと手を添え、エスコートしてくれる彼に素直に従い中へと足を進める。


「…あいつも素直じゃないのでね、好いた人ほど苛めたくなるのでしょう。貴女に魅力がないなどとは思っていないはずですよ………ほら、ね。」


歩きながらクスクスと話す夜行立会人の横顔を見上げていると、ずかずかと足音を響かせて近付いてくる怒った気配に驚きそちらを見遣る。


「おい、ジジイ。それと名前。こんなところで何をしている。」


向かい合っても鏡のようにならないのは下ろした髪のせいか、斜めに走る傷のせいか。それとも鬼の形相と朗らかな笑顔との違いか。とにかく二人が至近距離で睨み合っている。


「そんなに睨まなくても良いでしょう。名前さんとばったり会ったので少し話をしていただけです。」


「ふん!そのスーツはなんだ。」


私を引き寄せ、肩に掛かった夜行立会人のスーツを引き剥がすように脱がしたと思うと持ち主に投げ返す。


スーツを脱いだことでさらけ出される胸元を見て、少しだけ目を見開いた丈一さんは舌打ちをしながら自分のジャケットを私に掛けた。


その様子を見ていた夜行立会人が私に目配せをしてきたので、私も少しだけ微笑むとそれに気付いた丈一さんに腕を引っ張られてその場を後にする。


"夜行立会人、ありがとうございました。"唇の動きで伝えると首をふった苦笑いの彼が小さく手を降るのが見えた。


無言のまま突き進む彼に押し込まれるようにして入った部屋のドアに押し付けられて鋭い視線で見下ろされる。


私が口を開くよりも前に開いた胸元に彼の冷たい唇が押し付けられて反応する身体。


「…丈一さん、ちょっと……ここ、本部ですよ。」


「お前、あいつ以外にこの格好を見せた男はいないだろうな。」


何度も寄せられる唇と繰り返される痛みにやだやだと彼の髪を掴むが、更にきつく吸い付かれて上げそうになる声を抑えるためにその手を離してしまった。見上げてくる色っぽい瞳と視線が絡まる。


「自分が誰のものか自覚しろ。」


ニヤリと意地悪く笑う彼の言葉に思わず彼の頭を抱き締めた。



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