22Kiss

□耳…誘惑
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日付も随分前に変わってしまった深夜、枕元で鳴る携帯の着信音で目を覚ました。


誰や、こんな夜中に。忌々しく思いながらディスプレイを確認すると恋人である名前からの着信であったことに驚き、慌てて通話ボタンを押すと聞こえてくるいつもより甘えた声。


「雄大くーん、起きてたぁ?あのね、迎えにきて欲しいんだ。」


こんな夜中に何かあったのかと心配したが、女子会に行くと言っていたことを思い出して、その終わりに自分に電話を掛けてきたという彼女の行動に夜中に起こされたことへの苛立ちなんて消し飛んだ。


場所を聞くと近くだったので、直ぐに向かうと伝えて簡単に身なりを整え家を出る。


先程の電話で待つように指示したコンビニに到着すると、入口付近にしゃがみこむ名前の姿を見つけ思わず眉を寄せた。


中で待っとれ言うたのに、あんなとこで…乱暴に車を停めて彼女へ近づくと、そっと肩に触れ声を掛けた。


「こら、こんな遅くまで飲んで。ワシが来れんかったらどうするつもりじゃ。」


恋人からお迎えのおねだりなんて可愛いものでしかないが、そもそも休みの前日に自分を放って女友達と飲みに行ったことへ文句のひとつでも言っておきたかったのだ。


門倉が本当に怒っていないことをわかっているのか、ただ酔っているだけなのか顔を上げた彼女は此方を見るなり嬉しそうにその首に腕を回しすり寄ってきた。


「雄大くんありがと、好きぃ〜」


酒の匂いが相当酔っていることを教えてくれる。胸元に顔を押し付け好きだ何だ繰り返す彼女の頭を何度か撫でたあと、なかなか離れようとしない彼女を引き剥がすように車に押し込む。


「飲み過ぎちゃうか…まぁええ、帰るけどワシの家でええね?」


助手席に座った途端に大人しくなりうとうとし始める彼女の頭をもう一度撫でてから、自宅へ車を走らせた。


駐車場に車を停めてマンションまでの数分の間に寝てしまった彼女を起こすが、返ってきたのは「抱っこ。」という言葉。普段は見せない甘えた姿に笑みを浮かべる。いつもよりも色っぽいその表情に、少しだけ高い体温に、湿った素肌に欲を駆られるが酔っぱらい相手に手を出すのも彼女が相手だと踏みとどまれた。


「とんだお姫様やね、名前。」


抱き抱えると、先程の続きとばかりにすり寄ってきては胸元や首にキスを繰り返してくる様子に溜息を飲み込み部屋へと向かう。


部屋に着きベッドへ寝かせようとするも首に巻き付いた腕が離れないので、彼女に体重を掛けないよう一緒に寝転ぶ自分の耳元で酷く熱っぽく


「ねぇ、雄大くん…しよ?」


なんて囁いては耳朶を口に含む名前に


「…アホ、酔っぱらい相手にヤれるか。」


本日2度目の溜息を飲み込み、彼女の頭を自分の胸元に押し付け撫でていると暫く経って聞こえてくる控え目な寝息。


先程までの妖艶な様子など欠片も残していないあどけない寝顔を覗き込むとその唇にキスを落としてから身じろぐ彼女の耳元に囁く。


「…明日起きたとき覚えとくんやね。」


隠しきれない笑いを静かに部屋に響かせ、瞼を閉じた。



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