22Kiss

□額…祝福
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「ええ加減泣き止まんか。」



頭上から聞こえる呆れた声に、涙を止めようと努力するがかえって溢れてしまう。


「名前が悪いんちゃうよ…その状況やったらワシでも粛清する思うわ。」



わかっている。立会人を勤めている以上、粛清として人の命に手を掛けることもあれば、大切な何かを奪うこともあるってことくらい。それでもやっぱり慣れないものは慣れない。



そんなことでいちいち落ち込み、めそめそ泣く私を見つけて毎回慰めてくれる門倉立会人は、今回も珈琲片手に話を聞いてくれていた。



「…別に慣れろとか、何とも思わんようになれとは言わん。けど毎回こんなんやと身が持たんよ。ある程度割り切らんと。」



「わかってるんです。でも、どうしても最期の顔とか思い出しちゃって…ダメですね。」



涙を拭う私を見つめていた彼が急に近づいてきて頭をぽんと叩かれる。見上げる私に優しい声で囁く彼。



「…嫌な仕事こなす度に、ワシのとこ来い。」



どうしてと問い掛けようとすると、さらりと前髪を掬われ額に暖かい感触。何が起こったのかわからずそこを抑えているとククッと笑い声が聞こえた。



「何や、足りんか?もう1回するか?」



そう言いながら近づく彼の顔に、やっぱりキスされたんだと熱くなる頬。



「なんで、こんなこと。」



「嫌なこと忘れられるようにの、まじないじゃ。」



これでこのこと思い出すやろ、そう言って笑う彼にありがとうございますと返す。



「…まあ、唇でもええけどね。」




意地悪な顔をして言われた言葉に、さっきまでの陰鬱な気持ちが吹き飛んだ。




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