22Kiss
□髪…思慕
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会いたいなぁと思う度に欲の渦巻く裏カジノに出入りして勝負する相手を探す。
下心を隠そうともせずに声を掛けてくる男にポーカーで個人的に勝負しようと持ちかけ立会人を呼び出しホテルに向かう。何時もの彼が来てくれますようにと密かに願いながら。
何だこいつは、と怪訝そうに立会人を見る男に対し、会いたくて堪らなかった眼帯の彼は
「本日この賭けを取り仕切らせて頂く、賭朗弐號立会人の門倉雄大でございます。この勝負中立を約束致しますのでご安心を。」
と見慣れた笑顔と挨拶を披露した。
まだ警戒心の解けない様子の相手も、賭け内容を話すうちに本来の目的を思い出したのか厭らしい笑みでこちらを見てくるようになった。
「……では、苗字様は負けるごとに衣服を1枚ずつ脱ぐ、脱ぐものが無くなった時点で身体を差し出す、田中様はゲーム毎に10万円を賭ける、で宜しいですか?ゲームが終了するまでの暴力行為は一切禁止、プレイヤーが指摘しない限りのイカサマには我々は関知しないということで勝負開始でございます。」
私は頷く。
田中という相手の男は思ったよりもケチだったが、お金が目的ではないので了承した。
カードを配る門倉さんを思う存分眺めていたら田中が
「早くその服全部脱がせて泣かせてやるからなぁ。この男の前でヤるってのも想像するだけで興奮するよ。本当はそのつもりなんだろ?」
なんて勝負する前の男達お決まりの厭らしい言葉に心中で舌打ちしながらもにっこり微笑み
「楽しみにしています。」
と返す。
門倉さんが此方を見ていた。良くやった田中なんて。
出来るだけ長く勝負しないと門倉さんが帰ってしまう。少しでも長く彼と時間を共有したい。田中のやる気が落ちないように適度に負けて元々少なかった身に付けていた服を脱ぎ、下着姿になったところで今夜も勝ちを収める。
掛け金が無くなり文句を言いながらも大人しく帰る田中を見送り、取り立て額を確認する彼の背中に何時もの言葉をぶつけた。
「…こんなに立ち会ってくれるのだから、そろそろ専属になってください。」
少し間を置いて此方へ向かって来る何時もとは違う反応を見せる彼に期待と緊張がバレないよう下を向いていると、下着姿の私の肩に彼の長いスーツが掛けられた。
「苗字様は何故このような賭けをなさるのですか?」
問い掛けられ、
「門倉さんに会いたいから。」
と答えると溜息とともに
「わざわざ身体を賭けなくとも良いでしょう。」
なんて言われるから
「普通に賭けてたら印象に残らないでしょう。それに服を脱ぐのだって、少しでも私の身体に興味持ってくれたらって…」
彼と目が合うよう顔を上げて答える私の髪を掬うとそこに口付ける彼。その唇に釘付けになり固まる私。
「苗字様…もう勝負が終わったのでいいですね、プライベートな時間という事で。……名前、おどれがわしのこと好いとるんはバレてるよ。わしのは今のでわかるよな?まさかキスの意味知らんとか言わんじゃろうな。」
びっくりして固まる私に小さなメモを取りだし握らせ来た彼は
「これからはわざわざ身体を賭けた勝負などせずにそちらへご連絡下されば、ちなみに貴方の身体も大変魅力的だと思っておりますので。では失敬っ。」
にっ!と笑って部屋を後にした。
メモに書かれた携帯の番号と手のなかにある自分の携帯画面を見つめてにやつく私を誰にも見られないようにベッドに潜り込んで幸せを噛み締めた。
携帯画面には、
"キス 髪 意味 " の検索結果。
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