ライオンと魔女
□四兄妹との出会い
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それは、リラが寄宿生となってから、二年経ったある夏の事。
貴族とは名ばかりの庶民同然の生活を送っていたホワイト家は、
ドイツが仕掛けてきた戦争の将軍補佐に選ばれて派遣された。
低級貴族で何も特権を持たないホワイト家からすれば、随分な出世なのだが、
万が一負けた時に、責任を負わせ、切り捨てる貧乏くじを引かされただけなのだ。
リラの父親はそれを重々承知の上、家の為に引き受ける事とにした。
彼は、聡明な男で常に数年先や最低な事態を見越して行動に移す。
自分が戦地へ行っている間、唯一気がかりだったのは、娘のリラだった。
父親の聡明さを受け継ぎ、信頼してはいるのだが、実年齢が幼いのだ。
仮にも貴族の家なので、人脈はある。
身分の同じくらいの家に預ける事も出来るのだが、
真相は貧乏くじに当たっただけであるとはいえ、差し置いて出世する事で預ける事に対して申し訳なく、
また、リラが母親に似て貴族特有の堅苦しさを嫌っているので無理を言えなかった。
考えに考えた末、彼が子供の頃から、博物館みたいで気に入り、
大人になった今もリラを連れてお邪魔しているカーク教授のお屋敷へ疎開させる事にした。
カーク教授のお屋敷へ疎開する話を聞き、リラは無言で頷くだけで、表情からは読み取れる部分はなかった。
リラは父親の置かれている状況を完全に理解したからこそ、何も言わなかった。
必要最低限の荷物を淡々と用意して、集団で疎開する日をただひたすら待っていたのだった。