dream


□初恋
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第1話 出会い












今日は中学校の入学式。
私は早く起きて、準備をした。
新しい制服、新しい鞄、新しい靴。
何かもが新鮮だ。


「よし、いってきます…」


誰もいない部屋に声をかける。
一人暮らしなので、お父さんとお母さんはいない。中学進学と同時に引っ越してきた。


一刻も早く親と離れたかった。特に理由はないけど、もしかしたら反抗期かもしれない。



「にしても、眠いな〜…ちょっとハリキリすぎたかも」


独り言を呟いていると、目的地が見えてきた。橋が校門までのびていて、下は川が流れている。


さらに、周りは桜の木に囲まれていて、とても春らしい景色になっていた。


「桜か……キレイ」


「俺もそう思うぜ」


「そうなんですね…春といえばやっぱり桜ですよね」




…………ん?

私は誰と話しているのでしょう。


「わあぁぁっ!!……いつからいたんですか!?……あなたは誰ですか!?」


後ろを振り返ると、一人の男の人が立っていた。制服を着ているのでこの学校の生徒だと思う。


そうでなかったら、不審者だ…うん。



「そう驚かなくてもいいだろ」



やれやれと男の人はため息をついた。
黒い髪に、細い目。身長はかなり高い。




あれ?


私は彼の肌を凝視した。
刃物で傷つけられた跡なのか、切り傷が目元の下に残っていた。



「あの〜少し失礼しますね」


私は彼に近づく。制服のポケットからハンカチを取りだす。次に鞄からだした水筒の蓋を回し、中の水で布を湿らせる。


「おい、何して………っ!?」


男の人のキズにそっと、ハンカチをあてた。


「怪我をしていたので……あなたはこの小さな傷を何とも思ってないかもしれません。それでも、私は見過ごせなかった。」


私はそのまま離れた。男の人は硬直して、目を見開いていた。



さてと、そろそろ学校の中に入りますか。



「私はこれで失礼しますね。そのハンカチはどうぞ貰うなり、処分するなりしてください。」



一礼して私は走った。
時間を食った分、早く学校内を探索したい。



桜の花びらが私を歓迎しているように舞った。








これが私と彼の出会いだった。
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