〇ST赤と白の捜査ファイル(黒崎勇治中心)

□隠せない、隠したい
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各自、仕事が終わろうという頃

黒崎はパソコンで書類作成中。


黒崎「…っ!」


微かだが、肩を揺らし顔を歪めた。


山吹「どうかなさいましたか?黒崎さん。」


席が隣の山吹は、心配そうに声をかけた。

しかし、黒崎は首を横に振る。


黒崎「心配、いらない…」

山吹「それならいいのですが。

しかし、何かあったらお力になりますから、おっしゃって下さい。」

黒崎「コクッ」


青山「………」

翠「……」


その様子を、青山と翠が何かを考えるように見ていた。















しばらくして、山吹と翠は仕事を終え帰宅したようだ。

赤城と百合根は、聞き込みの後直帰したらしい。

ラボには、青山と黒崎が残っていた。

黒崎は、一息つこうとコーヒーを入れにいく。

しかし、左手でカップを持った瞬間。




ガシャンッ



黒崎「!?」


カップを落としてしまった。

そこへ声をかけたのは、同じく残っていた青山だった。


青山「やっぱりねぇ。」

黒崎「?」

青山「黒崎さん、昼間帰ってきてからずっと左腕庇ってる。

怪我、してるんじゃない?
黒崎さんにしちゃ珍しいけど、犯人逮捕の時にでも腕庇った?」


青山の言った事は、当たっていた。


























幼稚園児の男の子を誘拐する事件があり、黒崎は犯人逮捕の為、菊川に協力を頼まれ同行した。

犯人は、7人ほどいたが問題なく逮捕できるはずだった。

気絶したと思っていた男が一人、近くにあった鉄パイプを子どもめがけて振り上げた。

それにいち早く気がついた黒崎が子どもを庇い鉄パイプを左腕で受け止めた。

その後、菊川たちが無事犯人を全員確保したのだ。

初めは大丈夫だろうと思っていた怪我も、ラボに戻り仕事をしていくうちに痛みだした。

青山には隠し通せないと思った黒崎は、全てを話した。


青山「まったく、僕もなめられたもんだよねぇ。
僕たちに隠し事なんて出来ると思ったの?」

黒崎「僕、たち?」




ガチャ




「キャップは知ってるの?
怪我の事。」


言いながらラボに入ってきたのは、帰ったはずの翠だった。


翠「何で知ってるんだ?って顔ね。」

青山「安心していいよ。

キャップとの関係に気づいてるの、僕と翠さんだけだから。」




キャップとの関係。

それは、黒崎と百合根が恋人同士だという事だ。

この事は、周りには言っていない。
が、青山と翠には嘘はつけないという事だろう。


黒崎「キャップは、知らない…」

青山「心配かけたくないのは分かるけどさぁ。」

翠「キャップには甘えていいんじゃないかしら。

頼ってほしいと思ってるんじゃない?
…キャップは。」


二人の言葉に、百合根に申し訳なくなってしまった黒崎。


青山「ま、黒崎さん次第だけどね。

とりあえず、怪我の手当てぐらいした方がいいよ。」

翠「そうね。
でも、怪我の事知ったらキャップ、何て言うのかしらね。」

青山「大体、想像ついちゃうんだけど。

黒崎さん、ファイト!」

黒崎「うっ……。」


翠に怪我の手当てをしてもらっている間、青山の言葉に後の事が心配でならない黒崎。

















翌日、ラボにて。

青山達と話した後、結局心配をかけるのが嫌で怪我の事は言い出せずにいたのだが。


百合根は、怪我の事を知っていて。


百合根「黒崎さん!
どうして、黙ってたんですか!

何かあったら、僕に言って下さい。
僕に出来ることがあるなら、力になりますから!

いいですね?黒崎さん。
今度、隠し事したら本当に怒りますからね!」


百合根に、こっぴどく叱られたのは無理もない。

百合根が怪我の事を知っていたのは、きっと青山達がこっそり教えたのだろう。


STのなかで、嘘は無駄になる。

仲間をプロファイリングするのは、ルール違反だろうが何だろうが
心配なのだから仕方がない。

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