EXO
□羽根を落とした天使
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僕はずっと1人だった。
いつ現れるか分からない救いの手をずっと求め続けた
*
「美術なんて懲り懲りだ」
面倒な絵を書く授業なんか割りに合わなかった。だって俺は運動が好きだったし。古びた小さな博物館に行ってこいと言われよく分からない説明を受ける。
「お前そんなだるそうにするなよ。俺までやる気が無いふうに見られるだろ?」
ここの博物館の館長はイスマンと知り合いらしいからチクられてるぞ、なんてコソコソ話してくる。
「いいか、あのイスマンの単位は落とせない。アイツの再試課題面倒なんだよ。」
そうは言ってもアイツなかなか単位くれないじゃんと愚痴を零す。毎週イスマンの課題はお決まりの天使と悪魔の題材。俺は絵が下手くそだった。
「ジョンイン君、これはなんだね?」
そう言われて帰ってきた数々の絵達。
「一応、天使と悪魔……ですかね?」
「はぁ、君は本当に……」
ある意味才能だ、そう言われて付けられた評価は最低ランクのDだった。それを笑うかのようにテミンがやってきた訳だが俺は見たぞ。赤字で囲まれたそれには評価対象外と書いてあったことに。
「……それで現地行けって……、俺ら美術の進路じゃねーし。」
「カイ、諦めよう。美術で評価が最悪だったのは俺らだけだよ。」
しかも今回は夏休みを利用した補修に近いもの。
果たしてこの絵の補修は意味があるのだろうか。異様にあそこまでこだわりをもつイスマンもよく分からない。
「いたいた、これだろ?」
そう言ってテミンが指を指す方を見れば
「うげぇ……、これ」
作品紹介には天使と書かれているそこに俺は二度見してしまう。
「いや、悪魔だろこれ。」
可愛い容姿を想像していただけになんとも言えなかった。リアルな体つきに……
「めっちゃ何か刺さってるじゃんかよぉ。顔も無いし。」
首からスパンと切り取られたこのようなアートはデュラハンを思わせた。
「頭どこ?」
「いや、これが完成系だって。ミロのヴィーナス?だってあんなだけどあれが美しいとかなんとか?ってあんだろ?」
つくづく人間は不思議だと思った。見た目が自分と違うことに嫌悪する者、またはそれを美しいと言う者。
「俺には分かんねぇ世界だわ。」
おい、俺だって分かんねぇからな?と言うテミンにさっさと絵を仕上げて帰ろうと言って俺はそそくさとスケッチブックを広げる。
…………飽きた、
「……テミン」
「言わなくても分かってる。俺だって同じ気持ち。」
あたいを……なんちゃらって言われたが正直忘れた。
ほぼほぼ自己流な描き方に美的センスの無さ。
うん、俺は向いてないな。
正直早くこんなこと終わらせて俺はダンスがしたくて堪らなかった。
そんな程度にしか考えられなかった。