EXO

□被害妄想君と自意識過剰君の恋愛取り扱い説明書は只今、売り切れにつき。
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何事もありませんように。
そんな事を思いながら非常階段で俺は昼食を取る。教室は煩いし、かと言って食堂も嫌だ。静かな場所を好んだ俺が見つけた場所はなかなかいい所だと思う。景色は綺麗に見えるし。何より人が来ないと言うのが凄く嬉しかった。

「あっ、このパン美味しい……」

喋る相手も居ないのでこれは独り言である。友人は要らない。なんせ、人はいつ裏切るか分からないからだ。被害妄想と言われればそれまでだが、これは父の影響が大きくある。

『いいか、ミンソク。世の中は全て嘘と欲に塗れてるんだ。決して人の事を信用してはならないよ?』

その言葉は幼少期の俺にとっては衝撃的だった。人を疑い信じようとはしない。決して人と話をしない訳では無いけれど、一定の距離を保ち、かつ、近寄らせない。

「あっ、ピクルス入ってる!!今度から昼食候補の仲間入りだな。」

美味しいパンに一人夢中になって食べる。僕は家事全般を行うことが好きで、中でも料理が好きだった。

「なーにしてるの?」

それは突然階段の上から掛けられた声だった。

上を見る形で俺は声のする方を見る。

「…………誰?」

ミンソクは誰一人としてまともにクラスの子の名前すら覚えていない。

「今日から転校してきたルハンです。案内して貰ってたんだけど道に迷っちゃって……てか、同じクラスだよね?朝も自己紹介したし。」

「……あー、そう。」

そう言ってミンソクは再び目線をパンに向けむしゃむしゃと食べ出す。

「え?俺に声を掛けてもらって嬉しくないの?」

これは誰が聞いても自意識過剰と取れる発言である。しかし、ミンソクは気にもとめない様子で、ルハンを見ることもなくパンを黙々と食べ、ウェットティッシュで手を拭くとルハンの横を通り抜けてそのまま教室へ戻った。

「え?何……あの子」

ルハンはとてつもない衝撃を受けた。いつだってチヤホヤされてきた自分が人に興味を抱かれなかった事があったであろうか?誰だって俺の容姿に見蕩れたし、男女共に好意を寄せられていたルハンにとってミンソクの態度は衝撃的だったのだ。

「クラスでは皆俺に好印象を持っていた。あの子だって……」

そこで思い出したルハンはやるせない気持ちを顔に表すのだ。思い通りにならない人に始めて出くわしたルハンは、なんだか分からない気持ちをメラメラと燃やしながらも目の奥が笑ってはおらず、ミンソクの名前を数回復唱して自分のクラスへと向かった。
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