EXO

□ウツロイの恋 完結
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「ルハン???」

嬉しそうに彼の名前を呼ぶ貴方。

僕はコーヒーを入れると寝室から聞こえる声の方向へ向かう。

「ふふっ、遅くなってごめんね?」

ぎゅっと抱き締め返すと貴方は嬉しそうに笑う。

彼の瞳は何も映し出していない。

ルハン……僕の兄。

突然の事故で帰らない人になった。

当時ルハニヒョンの恋人だったミンソギヒョン、僕の片思いだった人。

「早く……早くルハニが欲しい。」

「今日は随分と積極的だね?」

ヒョンを心配して肩を抱き寄せたあの日、貴方の目は誰も移すことなく僕の中にある彼を見つめていた。

「……怖い夢を見たから。」

「夢……?どんな?」

「ルハナが居なくなる……怖い夢」

「大丈夫だよ、ミンソギ。るぅはずっと一緒だから。」

仕草を真似て、声を真似て。

見えないと言われたストレスの原因だったそれはいつか治るかもそれない。

「罰は死んでからいくらでも受けるよ。」

ルハニヒョン……ごめんね。でも僕は狂おしい程にこの人を愛してるんだ。

いつか覚めてしまう熱は貴方をきっと孤独に導く。

甘い甘美な誘惑に僕はあっさり負けて貴方を抱いた。

自分の兄が死んだと言うのにそれよりも、儚げに泣く貴方が美しいと思った。

「……ルハニ??……どうしたの?」

ベッドの上で抱きしめたまま動かない僕を……いや、ルハンを心配する貴方を

「ミンソギが可愛くて、つい」

そう言って強く抱き締めてから貴方を押し倒す。

きしりと音を立てるベッドにやるせない気持ちになった。

今宵も虚夢に抱かれる貴方を愛する僕には何が残るのだろうか。

瞳からこぼれ落ちる涙に貴方は一生気付くことはないのだろう。

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