ツキウタ。
□嘘で固めた仮面でも、きみが、笑ってくれるから
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ある晴れた日の夕方。
窓側の席の自分は椅子に座ったままある一点を見つめる。
どうせ振り向いてくれない、
そもそも彼とは住んでる世界が違う。
私は凡人。貴方は努力の結果の天才。
努力は嘘をつかない、よく言えたもんだ。
確かにな、と思いながら溢れてきた涙を拭う。
あぁ、惨め。とても惨め。
こんな誰もいない教室で泣いたって誰も慰めてくれやしない。
『 …帰ろ 』
昔から彼の傍にいたのは私だ。
彼が地元から遠い高校に行くって言った時も彼の近くにいれるなら、と頑張って勉強してココまできた。
なのに入学して1度話しただけ。
それ以来話してはいない。
完璧お金の無駄ではないか。
母さんに無理してまで頼んだのに。
こんな自分の行動がアホらしく感じる、いやアホなのか。
「 …あれ、天音? 」
『 、い、郁…!! 』
何ヶ月ぶりだろうか、こうやって彼が私の名を呼んだのは。
こうやって、すぐ触れる距離にいるのは…。
「 なんか久々だね 」
『 ………そりゃね、アンタ学校にいないもん 』
「 あはは、確かにそれもあるけど…なんか天音に避けられてた気がして… 」
避けた、か。
そりゃ避けたくもなるっつーの。なんていうのは心に閉まっとく。
「 あのさ、天音 」
『 なに 』
「 もしかして、泣いてた? 」
……あーなんでわかった。
コイツは昔から変わらない。
私が泣いたらすぐバレる。
けどね、郁、甘くみないで、私を。
私いっぱい頑張ったの。
郁が東京行くっていうのを風の噂で聞いたとき以来、アンタを笑顔で送るために、私頑張ったんだからね。
ま、話す機会なんてなかったんだけどさ。
『 泣いてないよ? 』
「 …でも赤いけど… 」
『 私がドライアイなの知ってるでしょーが。それにさっきまで本読んでたからね、乾いて痛かったの 』
「 、そう… 」
『 話はそれだけ? 私用事あるから帰るね 』
「 ぁ、ま、待って!! 」
……珍しい。
郁が戸惑ってる。
あれ、こんな郁見たことない…。
ずっと隣にいたつもりだったんだけど…あ、つもりだからか。
だから…知らないこともあるんだね。
『 ふは、いーく! 迷うな! アンタなら大丈夫。私がついてるでしょ? 』
「 〜ッうん!! 」
まだ幼い少年の表情残してたのか。
私にはもうできない表情。
同い年なのに、幼馴染みなのに。
どうしてこんなに差が開いたんだろう。
けどまぁそれもいいや。
私がこうしてる事であの子が笑顔になってくれるなら、いくらでも私っていう犠牲は出すさ。
本当の私が見えなくなっても、ね。
end