死神の追憶

□雷
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その瞬間、目の前が一瞬白く光った。
……雷のようだ。遠くで雷鳴が響くのが聞こえる。

あぁ、そういえば今日の今頃は現世で大雨だったっけ。

死神の住むこの街の天候は現世の天候に左右される。現世が快晴ならこっちも快晴、現世が大雨ならこっちも大雨というように。
今回の大雨は、雷というおまけ付きのようだ。

すると、また目の前が白く光り、獅子の鳴き声のような雷鳴が耳を通り抜けていった。

その瞬間ふと、ある人物のことが頭に浮かんだ。…彼は雷が苦手だったはずだが……大丈夫だろうか……一応、事前に伝えてはいたが……

そう考えるとなんだか胸騒ぎがして、どうしようか迷った結果、部屋に様子を見に行ってみるということになった。(雷の日は大抵部屋に篭っているからである)


ーコンコンー

木製の扉の心地よい音が響く。

「は…はぁい……」

予想通りのふにゃふにゃとした弱々しい声が返ってきた。

「あのっ…レイダーさん、風音です。雷がなってたから…様子見に来たんですけど…入っても大丈夫ですか…?」

返事は無い。しかしこの場合、大体は入っても良いという意味なので、遠慮なく入らせてもらうことにする。

鍵はかかっていないようだ。木製の扉がガチャリと音を立てて開いた。

「…レイダーさん…?」

風音は目の前の毛布の塊にむかって話しかける。雷が鳴るのに合わせてビクッと震えている。

「…か…風音ちゃぁん……」

彼は、ひどく怯えた様子でこちらに向き直った。
ただでさえ青白い肌はさらに青くなり、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
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