死神の追憶
□雨と貴方と憂鬱と
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ー死神の世にも雨が降るー
6月、僕等の世界ー死神の住む街ーにも梅雨がやってくる。
…今日も小降りの雨が街を濡らしていく。ここ数日はずっとこんな感じだ。いい加減このじっとりとした空気にも慣れてきた。
窓の外では、紫陽花が雨の雫をうけて鈍く輝いている。
今日は生憎、仕事が休みで、することがこれでもかというほど無いのだ。この憂鬱な気分も時間が経つにつれて徐々に増していくだけで、一向に気分は晴れない。
今も、退屈しのぎという名目で図書館の一角で椅子に腰掛け、本を読んでいるが、正直、内容はよく頭に入ってはこなかった。
ーこれだから雨は嫌いなのだー
「ー何してんの?」
突然背後から声をかけられ、心臓が止まりそうになった。
振り返るとそこには、見慣れた友人の姿があった。
「ーー虚生」
僕は呼びなれた彼の名を口にした。
虚生は気だるように「…ん」とだけ言い、僕の隣に腰掛けた。
「仕事…もう終わったの?」
「あぁ、″あいつ″のせいで予定よりは遅くなったけどな」
そう言い、虚生は大げさなため息をついた。
彼の言う″あいつ″とは、おそらくあの司令官のことだろう。
さっきも皮肉が込められたような言い方をしていたが、2人は仕事が絡まない分には仲が良い。何でも昔からの付き合いだからだそうだ。
そういった関係を仲睦まじいと思う反面、羨ましいと思う自分がいる。
ー我が儘かなー
……いけないいけない…
雨の日は気分的に重くなるせいで、つい本音を言ってしまいそうになる。
あくまでも、虚生の″友人″というポジションの″諄″でいるためには、この思いは隠していかねばならないと決意したんだから……