死神の追憶

□雨と傘
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……あれは…梅雨の…そうだ下旬くらい。予報ではアナウンサーは今週は快晴が続くでしょうとか言っていたくせに、酷く長い大雨が降った週(何曜日だかは忘れた)だっただろうか…

私は何故か傘も持たずに道端に立っていた。
まあ傘を忘れたのは、あの的外れな予報をしたアナウンサーのせいなのだが……

ー時は数時間前に遡るー

私は折角、現世に遊び(正確には仕事)に来れたのだから好きな漫画家の新刊を買ってしまおうと本屋巡りをしていた。(どのような本を買ったかは伏せる)
……その結果、思ったより『仕事』の開始時間が遅れてしまい、今日のノルマを達成した頃には『あっち』への扉は閉じてしまっていた。

『あっち』への扉とは、私達の世界と人間界を繋ぐ大事な扉だ。数時間に一回、それもたった10分の間しか開かない。

いくら私が人でないとはいえ、このザーザー雨降りの中、大量の本を死守しながら扉が開くのを何時間も待つのは流石にキツい。

絵(……うぅ…終わった…絵麻の人生終わったなの……)

死を覚悟(不老不死なので死にはしないが)し、遺書を書こうと決意したその時、不意に自分の身に雨が降り注ぐのが止まったのを感じた。

「…大丈夫?」

…男の子だった。染めたんじゃないかというくらい綺麗なライトグリーンの髪は水滴を受けて鈍く光っている。目はぱっちりしていて赤みがかった目の色をしている。…いわゆる中性的な顔立ちというやつだろうか?学ランを来ていなかったら女の子と間違えてしまいそうだ。
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