大切なもの


□何が事実で何が偽りかさえも
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「お前がユウナか。よく来てくれたな」



イタチくんと干柿鬼鮫とかいう奴に連れてこられた暁のアジト。そこには顔中ピアスだらけのペインと名乗るリーダーだけがいた。何がよく来てくれた、だ。来るしかなかっただろ。



「お前には明日から我々の任務に同行してもらう。そしてメンバーの治療に当たれ」

「…」

「もし少しでも怪しい行動をとったら木ノ葉の未来はないということを覚えておけ」



逃げ場はない、か。そりゃないよね。

そう言って手渡されたイタチくんたちと同じマント。
これからこのマントに袖を通して生きてかなきゃなんない。

最後に一目でもいいから綱手様やシズネに会いたかったなぁ。元気にしてるかな。今日も賭博場行ってるのかな。なんて現実逃避したことを考えながらマントに袖を通した。



「これでお前も暁の一員、俺たちの仲間だ」



…仲間、か。そんなの願い下げだっつーの。私の仲間は木ノ葉の仲間だけだ。
なんて思いながらももうあの場所には帰れない。

私は里を捨てた。たとえどんな事情があろうとそれは揺るぎない事実だから。



「では明日から頼むぞ、ユウナ」



そう言ってペインと干柿鬼鮫が消えた。と同時に重いため息が出た。

明日から敵であるはずのこのマントを着て、敵であるはずの暁のメンバーの治療をする。それも適当にやってたら木ノ葉に被害がいく。それはなんとしても避けなくちゃいけない。

私は大切な人を守りたい。そう思って綱手様に弟子入りして医療忍者になった。だけど、結果的にそれが大切な仲間を傷つけることになった。


ごめんね、アスマ。
ごめんね、紅。
ごめんね、ナルト。

ごめんね、…カカシ。


何度謝っても謝りきれないよ。
だけど、これが私の火の意志だから。

里のことは頼んだよ、みんな。


そう思いながらぎゅっ、と目をつぶる。



「…ユウナさん」

「!…イタチくん」



私の後ろにいるイタチくんがぽつりと呟く。



「…俺の弟のこと、わかりますか?」

「…サスケ、でしょ?」



あなたが一族を皆殺しにして里を抜けたことでひとりぼっちになったサスケ。十分知ってるよ。でも、



「…あいつは、元気にやってますか?」

「!」



なんで、なんでそんな優しい顔でサスケのことを聞くの。



「…ユウナさん、俺の本当の気持ちを言ってもいいですか?」



辛そうに顔を歪めるイタチくんに私は黙って頷いた。



「…俺は今まで、あいつに辛い思いばかりさせてきました。本当にダメな兄貴です。だけど、俺はあいつに本当の意味で幸せになってほしいんです」

「…幸せに?」

「…はい。あんな事件を起こして里を抜けてあいつを独りにした。それでも俺にとってあいつは、唯一無二のたったひとりの大切な弟なんです」

「…」

「…勝手ですよね。でも、これが俺の本心なんです」



そう言って遠い目をするイタチくんに、この前抱いた疑問が確信に変わった気がした。
彼は罪人なんかじゃない。きっとそうするしか方法がなかったんだ。そう思った。



「…サスケは、元気にやってるよ」

「!」

「…でも、今は復讐にとらわれちゃってる。イタチくんを殺そうと躍起になってる」

「…やはり、そうですよね」

「…だけど、いつかわかる日がくるよ。わかり合える日がくる」




慰めほどにもならないと思うけど、今のイタチくんを見てそう思ったから。イタチくんは「そうなればうれしいです」と悲しそうに笑った。



「…ユウナさん、」

「なに?」

「ひとつ、あなたにしか頼めないことがあるんですが聞いてもらえますか?」




その後に続けられたイタチくんの告白に驚きを隠せなかったけど、彼の真剣な目を見て黙って頷いた。






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